2016年05月01日

久々に一気に駆け抜けたゲーム

今回は少し前にクリアした機関幕末異聞 ラストキャバリエ (キャラメルBOX) についての所感を述べてみたいと思います。
実はこのゲーム、その前にプレイしたつよきすFESTIVALをクリアしてからプレイを始めたのですが、前に手を付けていたゲームを追い越して一気に最後まで読みきってしまいました。ぼくは基本的に浮気性なので、いくら面白いゲームでもそればかりを掛かりきり(但しRPGやSLGのようなゲームは除く)にプレイすることはほとんどないのですが、この機関幕末異聞 ラストキャバリエは数少ない例外といえます。

この一気に読ませるということは基本的に褒め言葉として使われています。推理小説などは典型的な例で、犯人やトリックなどの謎が気になってラストまで読みきってしまうのはよくあるケースです。
ところがゲームの世界ですと、そう単純には言い切れないとぼくは思うのです。一般に小説よりも文章量が圧倒的に多いのがゲームで、これを一気にラストまで読み切ったとなると「それだけ文章量が少なかったのか?」となるのですね。
この機関幕末異聞 ラストキャバリエ というゲーム。エンドは6種類あるし、一本道の展開と言うわけではありません。そういう意味で文章量が少ないという指摘は当たらないのですが、このゲームのライターである嵩夜あやの代表作である処女はお姉さまに恋してるがそうだったように、共通パートが多くてスキップ機能を使用するとかなりの文章が飛ばされてしまうのですね。修理&彦斎ルートと一葉&沙乃ルートはその際たるもので、この2つのルートはラスト以外ほぼ共通なのです。他にもこの対になるルートとして龍真&以庵ルートと考ルート。土方ルートと近藤ルートがありますが、それもかなりの部分がスキップすると飛ばされることになるので、アッという間に終わってしまうような気がしてしまうのです。

といってもやはり次の展開が気になるからこそ先を読み進めたくなるわけで、ストーリーに対する牽引力はおとボクの頃から衰えがないといえます。ただ惜しむらくは本当ならメインヒロイン格であるはずの土方ルートと近藤ルートが1番味気なく感じられるところ。この2つのルートはほぼ史実に基づいて進んでいくのですが、ラストが狭義の意味でハッピーエンドとはいえなかったり、もう1つ史実に基づいている考ルート(沖田の恋人として一般に知られている女性の設定とは違うが・・・)があって、そちらの方が史実に近く、また俗に言うバットエンドに近い終わり方でありながら、新撰組の終焉や沖田の生涯を考えると近藤・土方ルートよりも良く感じられるのですね。これでは局長や副長の面目が丸つぶれと言わざるを得ません。

あと近藤・土方ルートが光らなかったのは、どちらも主人公にだだ甘のお姉ちゃんキャラだったこと。2人のルートが史実を追っていくものだったため仕方ないかもしれませんが、2人のキャラ設定が突飛なものに出来なかったゆえに、どうも2人の違いが大きな差として表れなかったのですね。その上、終盤までほぼ展開が同じとなれば差異が感じられなくても仕方ないところ。これでは2人のルートが凡作に終わるのは必然だったのかもしれません。

それに対し、修理&彦斎ルートと龍真&以庵ルートは嵩夜あや流の大胆な歴史IFが魅力でなかなか楽しませてくれました。一橋慶喜に開国論や公武合体を説いた幕末時代洋学研究の第一人者である佐久間象山が暗殺されなかったらというIF。大政奉還を成功させ武力による薩長による倒幕を(一旦)頓挫させる形となった坂本龍馬が、見廻組に暗殺されなかったらというIFは定番ながら、そこに一見2人と関係薄・・・むしろ龍馬暗殺犯人説に新撰組が候補となっていたくらい・・・な新撰組を大胆に絡ませたのが面白かった。こうした大胆な変更があってこそ、主人公を男性にしたのも意味があったと思うのです。
ただ修理&彦斎ルートは暗殺されたはずの芹澤賀茂が終盤突然登場したりと、少年ジャンプ顔負けの超展開を見せた上に、それに納得いく説明がなかったのはさすがにマイナス。こうした点は気にしだすと、どうしても面白さが阻害されてしまうのです。特にこのルートは瘴姫の謎について語られるなど、このゲームの本線であろうルートなだけに、余計にこうした力押しの展開は鼻白む原因となってしまうのですね。芹澤賀茂というキャラクターは近藤や土方よりも(このゲームでは)魅力あるキャラクターだっただけに、再登場させたくなるのは分からないでもないのすけどね。

そういった意味でバランスの良かったのは龍真&以庵ルート(&考ルート)でした。倒幕派だった坂本龍馬と新撰組を結びつけたりとIFものとしては1番こじつけが強かったルートですが、船中八策や勝麟太郎(海舟)との関係を上手くまとめ、また岡田以蔵を勝の護衛役として口利きしたエピソードなども上手く昇華させるなど、修理&彦斎ルートのような派手さはないですが充分楽しめました。逆に言えばぼくが1番最初にこのルートをプレイしてしまったからこそ、一気にラストまで走りきっていまった(そしてやや期待を裏切られる結果になった)要因なのでしょう。

(総括)

決して凡作などではなく、どちらかといえば良作と呼んでも差し支えない作品。ただスチームバンクとしての世界観でありながら、それを完全に生かしきれなかったり、肝心の近藤・土方ルートがパッとしなかったりと惜しいと思わせる場面が目立つのが難点。あと有栖川宮と和宮は恋人同士だったようだが、この世界では皇族の女性同士が恋人として認められるのか?といった点や、幕末四賢侯として知られた松平春嶽公はCGを見る限り瘴姫のようですが、とすれば福井藩の姫君がなぜ瘴姫になったのか?それともこの世界では女性でも藩主になれるのか?(ならば他にも女性の藩主がいてもよさそうですが・・・)などツッコミを入れだすときりがなかったりと、やはり文句なしの良作と呼ぶのが憚られるのは間違いないところ。そういった意味では名作になりそこねたという評価が1番似合う作品だったといえるでしょう。

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