2017年04月24日

テーマを全うしなかった報い

デビュー作以来、ぼくがずっと買い続けている数少ないブランドがアサプロですが、今回はその最新作であるスキとスキとでサンカク恋愛 について語ろうかと思います。

(ここからネタバレ)


この最新作の表題を見れば、このゲームが男女の三角関係をテーマにしていることが分かります。といっても腐っても美少女ゲームというジャンルを標榜している以上、男×男×女の三角関係を主題にするのは荷が重く(というかアサプロの作風に合わない)、男(主人公)×ヒロイン×ヒロインの三角関係をテーマにしているわけですが、正直ぼくはこのテーマに惹かれることはありませんでした。
というのも過去作であるひとつ飛ばし恋愛で、姉や従妹の友人(ヒロイン)との恋愛関係といった(ぼくにとっては)魅力あるテーマを消化しきれなかったからで、男×男×女の三角関係ならともかく、主人公を取り合うヒロイン2人という構図だとしても、やはりアサプロが得意とするような展開にはならないだろうと思ったからです。

この予想は概ね的中していました。
確かに主人公たち部活の面々は濃いキャラが揃っていますし、一見笑いを呼ぶに事欠かないように思われます。ただこれが意外とままならなかったのですね。というのも茜先輩のBLや志衣菜のエロゲー等各キャラには専門分野があって、それに関して各キャラは独自の濃さを発揮するのですが、他のキャラはそれに深く関与しないためギャグが単発に終始し会話がどうにも繋がらない。部長のガチャ狂いなど局所的には面白い部分もあるすが散発的。会話のキャッチボールによるテンポの良い笑いに関してはほとんど見当たらず、ただ一発ギャグを羅列するするだけような笑いに終わっているのです。
確かにアサプロが先鞭をつけたといっていい「ヒロインを貶めても笑いをとる。」という姿勢は今回も貫いています。志衣菜のエロゲー知識の濃さに関しては、もはや狙って喋っているのか天然なのか分からない域に達しているし、すずが時折見せる腹黒さもまずまずいい味を出しています。ただ今回テーマ的に萌えゲーを意識しているのか、アサプロ得意の顔芸を含めそこまでヒロインを貶めた印象はありません。まあ志衣菜がその分1人で張り切っているというか全てのオチ担当要員と化しているのですが、肝心のテーマである三角関係に関しての描写が今ひとつで何か笑いまで空回りしているような気がするのですね。

それでも恋ルートである真帆と志衣菜に関してはまだ救いがあります。今回のヒロイン連では一番の萌え担当である真帆は(ぼくが幼馴染スキーであることも大きいのですが)一番可愛く見えましたし、志衣菜との三角関係もうまくまとめた印象でした(まあ妹ルートでも恋人候補として立候補してくる志衣菜が素直に身を引くような展開ははどうかという気もするのですが)。逆に志衣菜ルートの方が真帆が主人公に対する微妙な心情を表現していて、三角関係をテーマとするシナリオとしては一番良かったような気もします。
それに比較するとメインヒロイン格であるはずの七緒&すずの妹ルートの方は、三角関係をテーマとするシナリオとしては落第に近い。主人公をめぐって恋の鞘当てをするといった描写もなく、すぐに相手の応援に回ってしまうのでは三角関係でも何でもなく、これではタイトル負けしているといっても過言ではありません。ぼくの頭の中では肉親が絡んだほうがドロドロした三角関係を表現できたと思うのですが・・・

逆にいえばアサプロ制作陣は笑いや萌えを重視していて、ドロドロした三角関係というシナリオを展開しようという気は更々なかったのかもしれません。ただぼくが思うには、それならば最初から「サンカク関係」なんてタイトルにしなければ良かったと思うのです。笑いも萌えもシナリオも中途半端・・・今回はそうした印象が否めなかった。萌えなら他のメーカーに任せておいて(悪い意味でなく元々アサプロの主戦絵師に純粋萌えゲーを描かせるのはぼくは守備範囲外と思っている)アサプロ得意とする笑いを追及して欲しい。ただここのところのアサプロの作品群はぼくの求めるものから外れてきていて、次の作品は黙って予約買いとはお世辞にも言えなくなってきたような気がしないでもないのです。

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