2015年08月08日

主人公への嫌悪感を上回る面白さ

これだけ積みゲーが増えてくると、次にどれに手を付けていいか迷ってしまうことが多いです。
目の前に候補のパッケージを5~6本並べて逡巡するこト小1時間。ようやく崩すゲームを決めてインストール。その後メーカーのHPへ行ってパッチがあるか確認して、修正ファイルをダウンロード。ようやくプレイ開始できると思ったときには1時間以上経過していて、既に就寝時間になっているなんてことがほとんど。
何かもっとオートマチック的にゲームを選ぶ方法がないかと思っているのですが、これがなかなか難しい。批評空間の平均(または中央)値順ならば、真っ先に手を付けなければいけないのは素晴らしき日々 ~不連続存在~(ケロQ)WHITE ALBUM2 ~closing chapter~(リーフ)なのですが、この2本をプレイするには心にかなり余裕がなければならず、なかなか踏ん切りが付かない。今、中断しているゲームを優先的に・・・とも思っているのですが、途中放棄しているのはそれなりに理由があるわけで、そのほとんどがぼくの嗜好に合わなかったものばかり。ならばと最近は購入したばかりのものから優先的に選んでいるわけですが、それでも悩む時間が多少減ったくらい。
まあ最近は購入本数が激減していて毎月1本程度しか新作を買っていないので、選択の余地は減っているのですが・・・

というわけで現在は昨年後半に購入したものを専らクリアしているところ。そんな昨年後半の中でかなり評価の高かったのが月に寄りそう乙女の作法2(Navel)です。前作はルートによってかなり出来不出来の差があったものの、総合的には面白かったといえる作品でしたし、そのファンディスクといえる乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris- (Navel)もかなり水準が高かった。というわけで期待値はかなりのものだったのですが、不安点は本編とライターが替わっていたこと。今回のメインライターである東之助氏は本編にも関わっていた(らしい)のですが、承知のとおり本編は各ルートごとに差があってもし東之助氏がハズレのルートのライターだったら目も当てられない。まあファンディスクのほとんどは彼が関わっていた(らしい)のでその懸念は杞憂に終わる可能性が大なのですが、それでも多少の不安はありました。

(ここからネタバレ)

そして序盤をプレイしてその懸念が現実のものになりかけました。というのも前作と今作の主人公のキャラクターの違いがあまりに大きかったからです。
前回の主人公が自分のことよりも他人のことをまず考えるタイプのいわゆる聖人といっていいような人物だったのに対して、今回の主人公はいわば自信家で唯我独尊。その上、人を辱めることに躊躇しない(それでいて異常に惚れられる)というおおよそぼくの趣味には合わない主人公であり、またこのようなタイプが女装潜入ものの主人公を務めるのはおよそ不適格のように思われて仕方なかったのです。
ただこういった心配はプレイするに従って徐々に解消していきました。というのも会話のテンポのよさに加えて主人公がこのような不遜な態度を見せるのは人間的に未熟であるという表れであることが徐々に明らかになってくるからです。そういった意味でこのゲームのハイライトがエストシナリオであり彼女がメインヒロインであるのは当然だと思います。まあこのゲームでたびたび(ギャグとして?)語られている人をSとMの二つに分けるという思想は(ぼくの考えでは)とても受け入れられるものではありませんが、他のヒロインとのHシーンで傍若無人ぶりを見せる主人公に対し、エストが逆に制裁を加えるシーンは痛快でした。
ただエストシナリオはこのゲームの主眼であることは間違いなのですが、伏線未消化の部分があってデキはともかく完成度が高いとは決していえないのですね。
そういった意味ではパル子(春心)や朔莉シナリオの方が小粒ながらまとまっていたといえます。というかこれまでの前科からハズレばかり(といったら言い過ぎか)だった西又キャラのシナリオがそれなりにまとまっていたことに驚いたからこその上積みかもしれませんが・・・
まず朔莉は冒頭から変人キャラ全開でおおよそヒロインを務められるような性格ではなかっただけに、あの過去についてはおおよそ予想の範疇。それでも朔莉が主人公に異常な執着(人これをストーカーという)を示すのもある意味納得できるし、天才的子役という設定からも変人キャラが作られたものというのも受容できます。ただラストの演劇シーンに盛り上がりが欠けたのが惜しまれるところ。前作にはなかったフィリア学院演劇科が朔莉というヒロインの存在のためだけに作られたといっては言い過ぎかもいれませんが、どうにも作りこみに甘さを覗かせた影響が出たのではと推測されます。

ぼく的に一番可愛く感じられたヒロインがパル子(春心)。というより親友であるマルキュー(弓)の存在に惑わされてしまっているかもしれない。というのももしぼくが主人公だったといたら絶対にマルキューの方に惹かれるであろう魅力あるキャラでしたから。
パルコの病気についてはやや大げさすぎる気もします。単なる(というと患っている人に怒られるかもしれませんが)パニック障害でもストーリー的に問題なかったような気がしないでもない。それでも二人の友情は不変だしパル子を護る主人公の姿は、他のルートにはないカッコ良さを感じさせました。

ルミネルートはデキが良い悪いとは別の次元で気に入らないことが多すぎて、ストーリーに没頭することが全く出来なかった。他のルートでは存在感のない大瑛の好人物っぷりが味わえたことくらいがプラスな点。別にルミネに責任があるわけではないのですけどね。

こうしてみると前作やFDに存在していた悪役を務める人物が今回は見当たらなかったのは意外でした。最初ラフィーレがその役を務めるかと思ったのですが、全くのハズレでした。というかあの主人公とタメを張れるような悪党を出そうとすれば、超大物の悪党にせざるを得ず、とすると雰囲気を壊してしまうことになりかねないだけに妥当だったかもしれません。全体的に言うとこれだけ感情移入できない主人公でありながらゲームを楽しめたということは、会話部分を含めそれだけ他の部分が良かったという証左でしょう。そう考えればライターに手腕について評価しなければなりません。ただ面白さの大部分については前作やFDで培ったつり乙世界という土台があってこそで、全くの新作であったとすれば好感より嫌悪感の方が上回ってしまったかもしれません。

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