2016年12月27日

デビュー作より後退したか?

これが恐らく今年最後のレビュー(というほど最近は大した文章を書いていませんが・・・)となりそうで、折角なので今年を代表するエロゲーの中からノラと皇女と野良猫ハート -Nora, Princess, and Stray Cat.-(HARUKAZE)を取り上げたいと思います。
前作のらぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE! はプレイ済みですが、とにかく評価に困る作品でした。他のエロゲーには見られない癖のある文章で、登場ヒロインたちも癖があり萌えゲーをプレイしたようで、そうでない不思議な読後感を味わいました。そういった意味でもHARUKAZEというブランドに注目していたのですが、次作まで3年もの月日を待たなければいけないとは思いませんでした。そんな次作が発売前からまさかのアニメ化が決定しているとの一報。あれだけ癖のあるデビュー作から考えると狐につままれた気分なのですが、3年の月日がどのような変化をもたらしたのか期待を持ってプレイを開始したのですが・・・

(ここからネタバレ)

アニメ化を意識しているのかどうかは分からないのですが、デビュー作のような妙なテンションは押さえ気味に感じられます。これをプラスに取るかマイナスと感じるのかは人それぞれなのですが、ぼく的には総合的にポジティブに受け取めています。デビュー作ではシナリオ中で矢継ぎばやにナンセンスなギャグを織り交ぜそれが妙な勢いに感じたことは間違いないのですが、話の流れを阻害していた側面はありました。今回は(恐らくライターが書きたくて仕方ない)ナンセンスな部分は幕間のネコのお考えやおまけシナリオに任せて、ある程度テンションは抑え気味。デビュー作がハイスピードでの暴走運転としたら今回はスピードを抑えての安全運転。といっても終始低速走行をしているわけでなく、スピードがある程度上がり暴走しそうな所でナレーションを入れるのが安全弁のように働いていました。といってもただの安全弁でなく漫才でいうところの軽いツッコミ役を上手く務めているのですね。パトルートでのしっぽもそうでしたが、こうした緩急を身につけたことについて、ぼくは後退でなく前進と見ているのです。そして主要ヒロインにも前回に居なかったタイプの黒木さんというツッコミ役を登場させるなどボケとツッコミのバランスが均等に近くなりよりぼくの趣味に近くなったというのもプラスに働きました。

そしてヒロインも前作よりも可愛く仕上がっています。これは原画家の進化によるものが大きいのですが、ヒロインのキャラ設定も前作よりも萌えにシフトしてきたような気もするのです。といってもこのライターらしいよくある萌えゲーヒロインにない面倒くささは持ち合わせていて、このあたりは趣味が分かれるところでしょうが単なる萌えゲーにしたくなかったライターの自己主張だったといえるのかもしれません。

ただシナリオについてはやや目新しさに欠ける部分はあります。明日原ユウキルートは終盤ヒロインに理不尽ともいえる不幸が訪れるという、よくある展開。シャチルートはSF展開やバカバカしさなど一番ライターらしさが表れたルートですが、いかんせんラストがあっけないのが難点。ぼく的に一番お気に入りヒロインだった黒木さんですが、これもヒロインに不幸が訪れるという点では明日原ルートと似ています。ただこちらは前半から黒木さんの母親との確執など伏線が張られていて、冥界をなぜか無双する黒木さんなど笑えるシーンもあり、前の2人より優遇されている気はするのですが、これもラストの大団円があっけない。そしてメインヒロインのパトリシアですが、笑いを含めるとこれが一番デキの良かったルートかもしれません。ただパトの母親との和解があっけなく進んだこれも大団円があっさりしていたりと、やはり物足りない部分が目立ちます。そう考えるとこのゲームはシナリオについては二の次であり、笑いを中心に見た方がいいのでしょう。そう考えるとデビュー作と違い笑いに特化したわけでないのが、笑いを求めていた人にはやや不満に感じられるかもしれません。

ここが難しいところで、もしルート終盤まで読ませるシナリオだったなら、笑いの不足もそう気にならなかったと思うのです。ぼく的には笑いについてクドくなくちょうどいい塩梅だったので、もう少しシナリオを強化してくれればと思ってのですが、これは欲というものかもしれません。それでも充分良作の範疇に入る作品であり、今年を代表する1本といえる作品だったとぼくは思っているのです。

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