2019年06月01日

失速した理由はどこに・・・

10年ほど前に初発症してから、忘れた頃にやってくるのが腎臓結石。
初めて罹ったときの痛みは今でも鮮明に覚えています。あの日は金曜日で血尿が出ていたにも係わらず、病院に行かず予約していた2本のゲームを引き取りに行くという自爆行為をしでかしたのですね。あの頃はまだエロゲーが全盛期ほどでないにしても、まだ売れていた時代で、名古屋駅にあった某ショップには月末の金曜日になると購入する人の列が出来たもので、腰の痛みでまともに立てないなか列に並んでようやくゲームを引き取りに行きました。なぜぼくが無理を押してゲームを引き取りに行ったかというと、もし病院に行って即入院となったら、折角予約したゲームが流れてしまうと思ったからですが、ゲームを引き取って家に戻ると安心したからか痛みが少し治まった気がして、つい買ったばかりのゲームをインストールしプレイを始めてしまったわけですね。
そのゲームというのは王賊(ソフトハウスキャラ)だったのですが、(もう1本は恋する乙女と守護の楯(AXL)これがなかなか面白く止める機会を見失って、つい病院に行きそびれてそのまま夜に・・・
そして腰の痛みがぼくの限界を超えたのはその日の夜10時過ぎ。それからは眠ることも出来ず、ベッドに横になるのも不可能。いっそ救急車を呼ぼうかとも思ったのですが、深夜に響く救急車のサイレンの音が近所迷惑になることと、救急病院に行って請求される医療費を考えると二の足を踏まざるを得ませんでした。そうその月に計3本もエロゲーを購入してしまったため、財布の持ち合わせが乏しかったのです。
痛みの中、気を紛らわせるため座椅子にエロゲーをプレイするさまは、まさにエロゲー決死隊そのものですが、さすがに日が昇り始めた頃には自転車を引きずりながら近所にあった(今はなき)S病院に行きました。そこは当時150床くらいの入院病床を持つ程度の総合病院だったのですが、院長が泌尿器科出身ということもあり泌尿器の最新機器が揃い泌尿器科の医師も多く、かつ土曜日も開院していたのです(さすがにこの時点で腎臓結石という見当はついていた)。ぼくは一番に診てもらうつもりで受付に並んでいたのですが、1時間ほど受付前のソファーで呻いていた午前6時頃、無理やりストレッチャーに乗せられ救急外来の処置室に連れていかれてしまいました。
その処置室で救急科の医師に「よく自転車で来られましたね。」と半ば呆れられながら、痛み止めの注射と座薬を入れられ、4時間ほど仮眠した後に泌尿器科にて診察を受けたところ、当然のように腎臓結石と診断され1週間後の造影剤検査の予約取らされたのですが、専門医から一番の良薬は水であり1日に2Lは必ず飲むことを厳命されました。
そしてその日帰ってから王賊をプレイしながら2Lどころか4Lほど麦茶を飲んだところ、自然に石が出たらしく翌日にはウソのように痛みがなくなり、造影剤検査をするころには全くの健康体になっていました。

あの痛みを10とすると、最近起きる結石の痛みは6か7くらい。どうやら結石を繰り返していると尿管が広がったりして痛みに慣れてくるらしい。そんな痛みがおよそ2年ぶりに襲ってきました。もちろん最初の頃と比べて痛みに耐えられるようになってきましたが、さすがにネット麻雀をする気になれずあの頃を思い出してエロゲーをプレイすることにしました。
そこで選んだのが未来ラジオと人工鳩(Laplacian)。ぼくがLaplacianのゲームを購入するのは初めてでしたが、前作のニュートンと林檎の樹も直前まで購入候補に上がっていたように、なんともいえない魅力を感じるメーカーなのですね。
そんな未来ラジオと人工鳩ですが、発売後の評価はニュートンと林檎の樹以上に芳しくない。ぼくも発売後の批評空間の評価を見て正直ガッカリしてなかば放置していたのですが、その低評価の主なものが体験版部分がピークで個別ルートの短さであることを思い出して、こんな体調だからこそプレイするに相応しいのではと思ったのですね。

(今回はネタバレは最小限にしています)

その発端部分はこれ以上はないのでは・・・と過言していいくらいの最高のスタートでした。
特にイシマルや水雪とラジオ番組をスタートし、学園のアイドル的存在である秋奈や人工鳩の権威で〇年前の航空機事故の原因となった伊耶那博士の弟子である椿姫を巻き込んでラジオ放送をしながら、狂った人工鳩を潰していくという展開は非常に面白かった。実際ぼくは体験版のすべてをプレイしたわけでないのですが、これをプレイしたら今後の展開に期待したとしてもおかしくないでしょう。
そしてなぜか主人公たちの本放送から数時間経って流れる、未来の放送。そこで知らない女の子の声と主人公が亡くなっているという情報。ぼくがあまり好いていないループものを思わせる展開を暗示されたのはややマイナスだったといえないことはないですが、それでも今後の謎を膨らませるといった意味では悪くないどころか充分といったところ。果たしてこれからどんな展開になるか期待するなというのが無理というものですが、ではなぜ批評空間の評価が芳しくないのか・・・

これは批評空間の感想でもチラホラと見かけた意見ですが、メインヒロインというべき葉月かぐやの魅力の乏しさにあるというのに全面的に賛同します。
これは序盤のスタートの良さを考えたら当然の結果ではないかと思います。主人公や水雪、秋奈といったラジオ放送の仲間からすると、かぐやは明らかに部外者。そんなかぐやを魅力的に描くには、プレイヤーを惹きつけるような特長がなければ、グループというより学園のヒロインといっていい秋奈の魅力に勝てるわけがないのですね。

主人公や水雪・秋奈らが人工鳩を破壊していく理由には充分説得力があります。特に主人公は人工鳩に対しずっと恨みを抱いていたわけです。そんな中かぐやはグループに入ることなく、また(語れない理由があったとしても)大して説明することなく、主人公たちから背を向けてしまうのです。確かにかぐやは謎めいた魅力のある少女であることは間違いないのですが、グループの心地よさと比べれば、かぐやルートで主人公がそんな居心地の良さから背いてかぐやに走る(乗り換える)理由が納得できない。
確かにかぐやルートでの自己犠牲という題材は美しいしお涙頂戴しやすいのは確かですが、この作品に限っては用意された材料は良かったのに肝心の調理に失敗したとしか思えないのですね。

まあ百歩譲ってかぐやを魅力的に描くのに失敗したとしても、他のヒロインの個別ルートが満足いくものに仕上がっていればぼくの不満も和らいだかと思うのです。ただこのゲームでまともだったルートといえば椿姫ルートのみ。彼女のルートはこの物語を転がしていく役割をしていて一番デキが良かったといえます。ただ、彼女の設定から考えて王道ヒロインとはなりえない立場であるのは誰もが分かるところ。ならば水雪か秋奈のどちらかのヒロインのルートをしっかり描かなければいけなかったのですね。
まあよくよく考えると童貞やチンコネタを繰り返す水雪も正統ヒロインになりえない立場でしたので、彼女のルートがダメダメだったとしてもまだ許容範囲。ただ秋奈ルートも今ひとつだったのが誤算で、その上物語をまとめるかぐやルートでも共感を得られなかった時点で、このゲームが失敗とはいえないまでも成功を収められなかったといえるでしょう。

ただ、このゲーム。捨てがたい味があるのは確かなのですね。評判のいい序盤部分は当然として、掴みも上々。人物配置も悪くない。それだけに最後の失速は痛い。あのようなご都合主義に近いラストにするなら、まだ主人公とかぐやが2人心中する代わりに世界を救うエンドにした方が、救いは全くないですが、ラストとしてはまだ納得がいったと思うのです。といってもループものでラストの後味が悪かったとしたら作品としてはどうしようもないわけで、そう考えると、このゲーム、どのような調理方法を行っても上手くいかないわけで、そうなるともはや設定自体が破綻しているといっても言い過ぎでないかもしれませんね。

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