2011年01月23日

ヘタレ主人公の犠牲者

昨年末から本格的に崩し始めたゲームがようやく終わりを迎えつつありますが、今回はその中の1本であるbitter smile.(戯画)についての所感を述べてみたいと思います。

このゲーム。丸戸史明氏と組んだ原画のゲームが立て続けにヒットとなったねこにゃん氏が初めてシナリオを担当するということで発売当時話題となっていました。原画家とライターの両立を果たしたというのはエロゲーの世界では余り例はありませんが、中には都築真紀氏のような成功した例もあるわけで丸戸氏からライター成功のエッセンスを受けているはずのねこにゃん氏がどのようなゲームを生み出すかぼく的にも注目していました。

そんなこのゲーム。大阪の下町を舞台に幼なじみヒロインと繰り広げる少しほろ苦い青春AVGという煽りどおり魅力的な幼なじみヒロインが登場します。いかにも大阪らしい勝気で何かと主人公に世話を焼くメインヒロイン桜子にダメさでは主人公とタメを張れるダメ系お姉ちゃんの要さん。そして主人公に懐いているように見えながらその毒舌で主人公を痛ぶるみいという轟木3姉妹と無口&不思議系ヒロイン宮津橋勇樹という組み合わせは定番ながらそのビジュアルさも相まってなかなかの魅力を秘めているわけですが、それをすべて台無しにしてしまったのが主人公でそのヘタレ&ダメ度合は近年のエロゲーでも最強格といえるのではないかと思えるくらい。
ただこの主人公のヘタレ度が強烈に感じるのはこれまでぼくがプレイしてきた戯画(丸戸シナリオ)のゲームと比べてしまうからかもしれません。つまりこのゲームの主人公の口調や他の登場人物との間で見せる掛け合いが丸戸氏の文体を模しているため、つい丸戸氏の主人公と比較してしまうわけですね。まあ丸戸氏の主人公もダメさや若干の痛い部分を秘めているのは確かなのですが肝心なところでは決めてくれるのでヘタレさをほとんど感じさせないのに対して、このゲームの主人公は全てに亘ってダメ&ヘタレさを貫いているためより一層ヘタレさが目に付いてしまうわけです。

そんな主人公の犠牲になってしまったのがメインヒロインの桜子といえるでしょう。桜子の主特性は世話焼きなわけであるわけですが、主人公があまりに人間としてのレベルが低いためどうも上手くこの世話焼きさが発揮できていない。つまり本来幼なじみヒロインの世話焼き部分を萌えとして感じられるのは主人公はともかくプレイヤーでも気づかないようなことに対して気遣いしてくれるところにあって、プレイヤーでも気づくような人間生活としての初歩の部分に気遣いされても萌えには繋がらないのですね。つまりプレイヤーに「そんなことまで世話を焼かれるなよ」と始終ツッコまれてしまうようでは主人公失格なわけです。

ただこういったダメ主人公でも相手役のヒロインやその展開によっては面白いストーリーになるはずで、ぼくがその相手役として期待したのは毒舌鋭いみいでした。本来その役を果たすはずの勇樹はその不思議思考が強烈すぎ萌えとは逆方向に突っ走ってしまったため、図らずもみいの両肩に懸かってしまったわけですが残念ながらこのみいシナリオが正直投げっぱなしとしかいえない最悪なもの。どうもこのみいシナリオを担当するはずのライターが投げてしまったため仕方なくねこにゃん氏が引き継いで仕上げたらしいのですが、シナリオ全体に突貫工事ゆえの手抜きさが漂っていて泣けてきます。本来なら主人公のヘタレ&ダメさを桜子とは別のベクトルから正していくという意味からみいの毒舌が設定されたはずなのに、それが全く活かされないまま話が終わってしまったのでは全くの設定倒れといっても過言ではないでしょう。

唯一シナリオとしてそれなりにまとまっていたのが要さんルートですが、これも桜子ルートと同じ妊娠ネタを持ってくるあたりライターの引き出し部分のなさを表しています。これを見る限りねこにゃん氏のライターとしての限界をみせてしまったわけで、これを見る限り原画家が本職のねこにゃん氏にゲームの企画だけならともかくシナリオから他のライターの尻拭いまでさせてしまったというのは戯画自体の人材不足を露呈してしまったといえるでしょう。企画&設定自体は悪くなかったのですからもし腕利きのライターがねこにゃん氏を支えていたとしたらもう少しゲーム自体の評価も上がっていたかもしれません。

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