2014年09月12日

不思議な読後感に襲われて

クリアした後、満足感に浸れるものが良作とするならば、不満ばかりが頭に残るものが駄作で、感動も不満もなく1週間もしたら内容をすっかり忘れてしまいそうなゲームが凡作と仮定すると、ほとんどのエロゲーがこのどこかに含まれるのではないかと思います。
もちろん良作が多ければ多いほど良いのですが、残念ながら凡作・駄作が多いのがこの世の倣いというわけですが、中にはこのどれにも当たらない妙な読後感に襲われるゲームがあるわけで・・・
今回ハロー・レディ!(暁WORKS)をクリアして久々にそんな感覚を味わいました。

もちろんこのゲームをプレイして口が裂けても面白くなかったなんて言うつもりはありません。るいは智を呼ぶ‘&’ -空の向こうで咲きますように-を評価しているように、このスタッフのゲームはいつも楽しませてもらっているのです。そして今回も期待していただけの力は見せてもらったとは思っています。


(ここからネタバレ)


そんな今作ですが、目立つのはこれまでのこのラインの作品とは一線を画す主人公の設定でしょう。その唯我独尊ぶりは開始当初鼻に付いたのですが、話が進むにつれて余り気にならなくなりました。というのも自分の譲れない部分を別にすれば、意外な柔軟性も持ち合わせている人物に描かれていたからです。そして異能バトル&復讐譚に相応しい高スペックな能力。前2作では全くの役たたずだった主人公のことを考えれば、この主人公の変貌ぶりは驚きといっていいくらいでした。
この主人公に比べるとヒロインはやや脇に回ったような印象はありました。それでも水準以上の魅力は保たれていたとは思います。朔はメインヒロインに相応しい純粋・高潔さを感じさせてくれたし、予想通りとはいえ珠緒のデレっぷりは強烈。この2人に比べると空子とエルはキャラクターとしてはともかくヒロイン性はやや弱いかなと思わないでもないですが、その分ストーリーで充分活躍しているのでお釣りがきます。その4人が揃うラストバトルは豪華絢爛といってよく、メインヒロインの朔だけでなく攻略済のヒロインにも光を当てた構成は良かったといえます。

ただプレイ後にどうも歯の間に小骨が引っかかったような違和感を感じたのは事実なのですね。
これはぼくが復讐譚というジャンルが元々好かないということがあるかもしれません。これは大部分の復讐譚が悲劇ものとしての体裁を整えているためで、悲劇よりもハッピーエンドを好むぼくの体質とは合わないからです。実際この作品も妹の瑠璃のために復讐を実行していた主人公に最後立ちはだかるのはその瑠璃だったというのは(主人公にとって)悲劇以外の何物でもありません。ライターも復讐譚を締めるには黒船を倒してハッピーエンドとするよりも、これまでの復讐譚を踏襲したいという欲求に駆られたのではないかと思うのです。
ただラストでの瑠璃の登場シーンがやはり唐突としか思えなかったのが痛かった。これはライターの伏線の張り方が悪かったというより、主人公と黒船とのイデオロギーをぶつけあった好バトルの後だけにやや損をしてしまったと思うのです。これは寄席でトリの前でひざがわりがたっぷり人情噺を熱演してしまったようなもので、これではトリの前で客が席を立ってしまっても仕方なく瑠璃とのバトルが蛇足のように思えてもある意味仕方ないところ。これまで構成の巧みさをみせてきたライターが唯一失敗したと思わせる結果となったのは皮肉としか言いようがないのですが、ではこれに変わる対案があるかと訊かれれば非常に難しい。まさか黒船に手を抜いて早々に退場しろとは言えないですしね。(まあぼくがバトルものに慣れてなく、2本続いたバトルに大概疲れてしまったこともあるのですが・・・)

そんなラスト部分でのマイナスはともかく全体を考えれば良作といっていい筈。それでもぼくがどうも物足りないと思ってしまったのは、これまで日野&衆堂ラインでは欠かさず登場していたヒロインが欠けていたことにあるとようやく気づきました。るい智のこより、コミュの紅緒、”&”の梨子とこれまで受け継がれてきたヒロイン枠が今回途切れてしまったためにぼく的にはどうもひと味欠けるような気がしたのですね。コーヒーに砂糖。紅茶にレモン。秋刀魚に大根おろしのように別になくても楽しめる(中には無い方がいいという人もいる)けれど、存在しないとどうも物足りない。決して主役を張るタイプのヒロインで中にはプレイヤーをイラつかせてしまうような存在だったかもしれないけれど、ストーリーを彩るヒロインとして欠かせなかったとぼくは思うのです。

いやエルがいるだろうと云われるかもしれませんが・・・勘違いしないでいただきたい!ぼくが言いたいのは決してロリ枠というわけではなくて、正義感が強くそしてそれがどうも空回りしているような青臭いヒロイン。そんなヒロインが今回存在しなかったことがぼく的には寂しく覚えたのです。
まあ主人公の設定的にこういったヒロインが存在しづらかったことは分かるんですけどね。

この記事へのトラックバックURL

http://sakanaeye.mediacat-blog.jp/t103025
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい