2008年05月13日

なぜかエロゲーには存在しない青春ミステリー

(前回の続き・・・)

ぼくと、ぼくらの夏を最初読んだときはぼくが見えていなかった魅力の部分。それはこのミステリーのメインヒロインである酒井麻子の魅力とそのまま置き換えてもいいでしょう。
というより、このミステリー最大のセールスポイントはトリックや動機の謎ではなく酒井麻子の可愛さにあるといっていいのです。口惜しいことにこのミステリーを最初読んだ当時のぼくには麻子の魅力にちっとも気づくことができなかった。それはぼくが主人公に替わって犯人を見つけてやろうと意気ごんでしまったこともあるのですが、麻子の取る数々の行動が当時のぼくにはさっぱり琴線へ響いてこなかったことにあるでしょう。それに気づけたのはまさしくぼくがエロゲー毒に脳髄まで犯されてきたことに他なりません。それくらい麻子はエロゲーのメインヒロインを張ってもおかしくない趣々の萌え言動を繰り返してくれるのです。

では、このミステリーが今流行のライトノベルの文体で書かれているかというとそうではありません。ライトノベルがキャラクターの会話の軽快さ、面白さで読者を引っ張っていくのに対しこのミステリーにはそこまでの軽快な会話のキャッチボールはありません。むしろこのミステリーは地の文で読者を引っ張ってくれます。このミステリーは全編一人称の文体で通しているのですが、主人公のややひねくれた(麻子ほどではないが)目で見る事象の表現が巧みなのです。

さてこのミステリー。エロゲーにリメイクしようとしたならば多分簡単にできる(収束は恋愛AVGっぽく変える必要はあるが・・・)のではないかと思います。というよりエロゲーにすべき内容です。このミステリー最大の弱点は動機の陳腐さにあるのですがエロゲーにすることによってこの弱点が覆い隠せるからです。それに今のエロゲーでいうミステリーのジャンルは狂気やホラー風味なものばかりでこういった現代社会を舞台(といってもこのミステリーが発表されたのは二十年前なのですが・・・)にしたミステリーは見当たりません。萌えゲーのジャンルでは学園恋愛ものが相変わらず幅を利かせているというのに全くもって不思議といえるのですが、ぼくが本当に読みたいエロゲーのミステリーとは狂気にとらわれた犯人や天才的犯罪者が犯す大掛かりな怪事件でなくぼくらの周りでいつでも起きそうな地に足が着いた事件なのです。
出来ればどこかのメーカーがこのぼくと、ぼくらの夏を参考にこういったエロゲーを出品してくれないかと願いつつ今回の更新を締めたいと思います。

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