2008年09月15日

明日の君と逢うのは二の次に

積みゲーリストの中でも古参兵に近い明日の君と逢うために(Purple)をようやくクリアしました。本来なら批評空間に長文感想を投稿するところなのですが、初プレイからの所要時間があまりに長すぎて記憶が混濁していることもあり多くの人の目に触れる場に載せるのはいささか不安ということで、今回は気分を変えてこちらで発表してみようかと・・・

<ここから感想>
クリアまでに掛かった所要時間が示すように、はっきりいってこのゲームの評価は低いです。というのもライターが登場人物の口を通じて語りたいことが、全くといっていいほどぼくに伝わってこなかったからです。
一例を述べてみると、このゲームの主人公は7年ぶりに故郷の島に帰ってきたわけですがそれはなぜでしょうか?
「そんなのあーちゃんに逢いたいがために決まっているではないか」
と答えが返ってくるかもしれません。ぼくも最初はそう思っていました。

ただその考えはどうやら思い違いであることが分かってきました。というのも、道中久しぶりにあーちゃんに逢える(かもしれない)という期待や不安感等がないまぜになった強い気持ちが全くといっていいほど主人公から伝わっていなかったこと。その証拠に(美少女の)小夜や久しぶりに会った瑠璃子につい気を取られことはあったにしても、もしあーちゃんに逢うという強い目的意識を持っていたとしたら必ずや葛藤が産まれるはず。少なくともあーちゃんの存在を忘れたかのような心持になるわけがありません。その上あーちゃんがいる可能性の高い自宅でなく学校へ主人公が向かうのを見て、ぼくは主人公があーちゃんが神隠しから帰ってきたという情報を(里佳あたりから)聞きつけて島に戻ってきたわけではないということに気づかされました。
だから主人公が明日香と森で会ったというのはあくまで偶然の産物だったわけです。だから主人公が明日香を最初に見たときあれほど驚いたわけで、もし明日香(らしき少女)が居るという情報を耳にしていたならばそんなに驚きはしなかったでしょう。

つまり明日香に対する主人公の思いというのは周りが思っているほど強いわけではないのです。
だから舞シナリオで舞に「目的を忘れてしまったの」と責められても主人公は困惑するしかなかったでしょう。別に何か大きな目的意識があって主人公は島に戻ってきたわけではないのですから。

実際ぼくがこのゲームをこれほど空虚に感じたのも明日香をメインヒロインにしなかったからだと思います。もし主人公が明日香に逢うという明確な目的があって島に戻ってきたとしたら、一本筋の通ったシナリオとなったはずだったのです。ただ、そうはできない事情がメーカー側にあったのでしょう。それはメインヒロイン一本かぶりにしてしまうとサブキャラ(特に非攻略キャラ)の人気が落ちてしまう。それは今後の戦略上好ましくない。そういった理由から「明日の君に逢うために」という一見明日香に対する主人公の思いを語るかのようなタイトルとは裏腹にいわば明日香を悪役にするかのようなストーリーにしてしまったのです。

それが明日香の消えた理由にも現れています。もし明日香メインのシナリオにするならば、明日香は神さま(りんとは限らない)に騙されるような形であちらの世界へ行ったという方がベターだし、またその方が自然です。でなければ今まで神隠しにあった島の人がもう少し戻ってきてもいいし、少なくとも記憶のほとんどを奪うようなことをしなくてもいいはずです。
それが神隠しのメカニズムを明らかにせず、神(りん)を悪者の一味にしないという中途半端な説明の仕方をしてしまったことにより、変わりに明日香をスケープゴートにしてしまいました。まあ確信犯なのでしょうが。

確かにこの試みはサブキャラに対する人気を高めることには貢献したかもしれません。ただ肝心のシナリオはあやふやで筋の通っていないものに変えてしまいました。物語の最初のテーマであったはずの明日香に対する主人公の思いは空虚なものになってしまい自然ライターが登場人物の口を通して主張する台詞も心に響かないものになってしまいました。もしPurpleが今後もこういったメインヒロイン軽視の戦略を取る限りシナリオに期待を掛けることは到底出来ないし、またぼくがこのメーカーのゲームをプレイする機会は訪れないでしょう。

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