2011年06月12日

例え畳みきれなかったとしても

かなり時間が掛かったのですが、ようやくグリザイアの果実(FrontWing)をクリアすることが出来ました。批評空間での評判は相当高くて知名度は別としてこれまで良作という台詞とは無縁の存在だったFrontWingのゲームとしては思えないくらいの評価を得ているのですが、その評判もあながち間違いでないと思わせるくらい面白いゲームでした。ただ何か引っかかるものが残っているのは確かで、このあたりが絶賛とまでいかないところなのですが・・・

(ここから多少ネタバレ)

構成としては笑いの多い共通パートの後ヒロインの個別ルートに分岐するというものですが、この個別ルートが共通パートとは様相をガラリと変えて鬱気味となるというのは、かっての名作ゲームにも頻繁に取り入れられていた手法でそれほど新鮮味があるわけではありません。
まあ序盤からそれとなしにそういった展開になることを臭わせていることもあって終盤シリアス展開になることは予想できたでしょう。それでもエンジェリック・ハウルのような話が待っているというのはぼく的には予想外でしたが、逆にああいった展開が全くないシナリオがあったとしたら序盤及び共通ルートから散りばめていた伏線のことを考えれば逆におかしいことになっていたはずで、その点は素直に脱帽したいところです。
ただ問題はその散りばめいていた伏線をどこまで回収できていたこということで、この点に関しては批評空間の感想をざっくり目を通した限り厳しい意見が見られます。
もちろんその意見は至極もっともで、謎が残ったまま収束を迎えたりするエンドが多々見られることを考えれば減点となるのは当然といってもいいでしょう。ただ他の伏線部分はともかく主人公の過去に関してはあやふやに終わっているのはぼく的にはそれほど気になりませんでした。というより語られることを期待していなかったというのが正直なところで、序盤からあれだけ壮大に広げてしまった風呂敷が畳みきれるとは端から思っていなかったのです。
ただそんなぼくでもこれはちょっとと思わせたのが由美子ルートで、ラストの対決シーンでトリックを見せないまま完全に腰砕けになってしまっているようではさすがに個別ルートとして弁護できない。特にメーカー推奨でこの由美子が最終ルートとなっていただけに余計に酷さが目に付きます。蒔菜ルートと同じ逃避行を題材にしているだけに比較されてしまうのが不運なのかもしれませんが、それだけが酷評される理由とは言い切れないとぼく的に思います。
逆にぼくが個人的に感心させれたのはみちるルート。このルートは主人公の過去や組織がシナリオの根幹にあまり関わってこない分より物語に没頭できたのは事実ですが、冷静に考えるとやや不自然に思えるみちるの過去(トラウマ)部分をプレイ中そう感じさせなかったあたりはライターの力といっていいと思います。

ただぼく的にこのゲームを一番評価しているのは実は長いと不評な共通ルートの方で、あれだけテンポのいい掛け合いを見せられたのは久しぶりといっていいくらい。特に蒔菜のシモネタと幸の毒舌には本当に笑わせてもらいました。この共通パートの笑いのことを考えれば個別ルートで伏線が多少謎のまま残っていたとしても些細なことではとぼく的に思ってしまうのですが、多分これは少数意見なのでしょうね。

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