2011年09月05日

疑問の残る収束

今回は同時進行していた積みゲーの中で一番最初にゴールへたどり着いたすきま桜とうその都会(propeller)の所感を書いてみたいと思います。
批評空間の中央値は79点。データ数も発売2か月強で3ケタに達しており、この好評価も信頼に値するといってよさそう。ライターもStarTRain(mixed up)Nega0(ETERNAL)をプレイしていてその実力を承知している七烏未奏とハズレる要素は見当たらないはずだったのですが、結果的には大きくとまでは言えないものの期待を裏切られたゲームでした。
七烏未奏独特のいい意味での青臭さがこのゲームでは逆の目で出てしまった気がしてならないのが残念でなりません。

(ここからネタバレ)

このゲームはマヨイガものの一種といえるのですが、導入部分で主人公と咲良が桜乃という世界に迷い誘われるあたりは、背景として映る桜の美しさも相まって非常に惹きつけられるものがあります。優しいうそを秘めていることが桜乃という世界と巡り会う条件という設定は今後に期待を抱かせるもので掴みはOKといったところ。
ただその後に進行する共通パートはやや退屈といった感があります。それでもテキストというより場面転換の巧みさからつい読み進めてしまうから不思議。普通これほど惹きこみが少なくてギャグも空振り気味となると飽きてしまいがちとなるのですが、それをあまり感じさせずストーリーを進めていける牽引力はライターの実力をある程度証明しているといえます。もちろんゲーム世界部分の暖かさ・雰囲気の良さも貢献しているのでしょうが、そこはかとなく散りばめられている伏線を含めライターの力量を過小評価するものではありません。まあここまでは充分平均点には達していると思います。

この感覚は個別ルートに入ってからもそれなりに続きます。一歩間違えればウザキャラとなってしまいそうなちょこを立派な萌えキャラとして昇華させていましたし、花珠ルートも定番ながらうまく伏線をまとめていたと思います。ただぼく的にこのゲームがあまり買えないのはどうにも着地に失敗した印象が拭えないからです。

このゲームには終盤、それまでの流れを根底から覆すような超展開が待っているのですが、ぼく的にはマヨイガという一種ファンタジー世界を主題にしている以上、終盤どんなSF的な収束に持って行ったとしてもアンフェアと取られることはないと思います。
ただそんな強引な展開にした割にヒロインである鈴が持ち上げられたという印象が薄くむしろ咲良に喰われてしまっているように感じられるようでは本末転倒に他なりません。咲良ルートの終盤がどうにもご都合主義的な収束に終わってしまったため、それを払拭するためにに鈴ルートが使われたのかもしれませんが、これでは鈴をかませ犬として使ったと言われても仕方がありません。確かにこのゲームで一番光っているヒロインが咲良であることについては間違いないのですが、それでも他のヒロインのルート(しかも隠れヒロインのルート)を使ってまで持ち上げられるというのは正直疑問に思えてならないのです。

もしライターが咲良を主軸に持っていきたいならば彼女のルートをラストに持ってくるべきですし、そうでなくとも鈴ルートをラストにするべきではなかったとぼく的には思います。それまで築きあげてきた雰囲気をなぜ終盤で壊すようなことをしたのか?採算が取れているならまだしもその収支は明らかにマイナスであるだけにぼくにはこの展開は解せないという思いがぼくには拭えませんでした。

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