2012年08月29日

敷居の高さが魅力的?

今回は久方ぶりにプレイしたライアーソフトの新作平グモちゃん‐戦国下剋上物語‐について思いついたことをだらだらと語ってみようかと思います。

ぼくがライアーソフトのゲームをプレイするのもおおよそ5年ぶりくらいになるのですが、ではなぜぼくがライアーのゲームから足を遠のけてしまったかというとライアー擁するライターの一人である天野佑一氏がパッタリ新作を発表しなくなったからです。
まあ氏の晩年(といってしまうのは寂しいが)の作品はというと、どうにも食指の動くものではなくて購入を躊躇ってしまうものばかりだったのですが、それでも好きなライターの内の一人が全く作品をモノにしなくなったというのは寂しいもの・・・。特に最近はライアー=スチームバンクシリーズと思われている節もあり、古くからのライアーファンであるぼくとしては少なからず寂しい思いをしていました。

そんなライアーですが、今年に入って何か古の作風を思わせるようなゲームをリリースしてくれるようになりました。前作の屋上の百合霊さんは同じ百合ものということで百合ものの名品サフィズムの舷窓 を連想させたし、今回の平グモちゃんも歴史を舞台としているということであの行殺☆新選組と同じ臭いいや匂いが感じられたのです。
そしてこの平グモちゃんを実際にプレイしてみてぼくの想像はあながち間違っていないことが分かりました。まあライターが行殺☆新選組と同じ岩清水新一氏であることから、同じテイストであるのは当然のことなのかもしれませんが、今回の平グモちゃんは行殺では軽くなぞるだけだった歴史小説かと思わせるシナリオの味をより強くさせたといった意味でも、より岩清水新一氏の色が出ているのではないかと思うのですね。

そんなライターの趣味が色濃く出ている今回の作品なのですが、悪い部分でもいかにもライアーらしい色が出てしまっていて、その代表といえるのがエロゲーにはあるまじきといっていいくらいなエロの薄さでしょう。
というより、ぼくの長年のエロゲー歴でもこのゲームくらいエロさを感じなかったゲームはそんなにはありません。Keyのゲームが「エロなんて飾りですよ。」と茶化されるのをよく見かけるのですが、ぼくが思うには明らかにそれ以上のエロ薄というよりこれ程エロさを感じさせないHシーンは奇跡といっていいくらい・・・といってもこれは原画家が悪いというわけではないのです。実際原画家のLem氏は非常にいい仕事をしていて、いつもながらライアーはどこでこんな実力派絵師を見つけ出してくるのかと感心してしまうくらい。ということはこのエロの薄さはあえてライアーがそうしていると考えるのが自然なのですが、これは作品の題材的にエロが合わないためあえて極薄にしているのか、それとも他に理由があるのかぼくにはどうにも判断が付きません。
そしてもう一つライアーのゲームに於いて評判の悪いパートボイスについてですが、女性キャラはともかく男性キャラの声について言うとこれはパートボイスというよりもうエフェクト(効果音)といっても過言ではないくらい。何せ台詞は全く喋らずに数種類の声が合いの手のように入るだけなのですから・・・
まあ男性キャラの声なんてまともに聞いていないから一般のユーザーにとっては別に構わないのかもしれませんが、このゲームは女性キャラより男性の方が主役となっているわけですから肝心な場面くらい声優陣に熱演してもらいたいとぼくとしては思うのですね。

まあそういった不満点はともかく、ぼくがこのゲームを充分堪能したのは事実です。それにこのあたりの欠点はライアーのゲームをある程度プレイしていれば容易に想像できることですし・・・
ただそれでもこのゲームを楽しむにはある程度の戦国時代の知識が必要なのは確かなところ。その知識も室町末期の畿内情勢という少々ディープな所を要求するとあってそれなりにハードルが高いのですね。まあそれほど知識がなかったとしても、ある程度は雰囲気で人物像は掴めると思いますし、後半は織田信長や羽柴秀吉といったお馴染みの人物が活躍するとあってライアーファンなら充分楽しむことができるかもしれませんが。

そんなこのゲームの主役は松永弾正。戦国時代でも悪名高い人物の一人といっていい彼が主役というのは相当意表を突いた人選ですが、謎の多い人物といった意味では確かに物語として膨らませやすいキャラクターといえないこともない。
そういった意味で、ふんだんに用意された偽史(IF)ルートはこのゲーム一番のキモといってよく、色々な歴史の可能性を考えるといった作業は歴史小説家冥利に尽きるというもので、ライターが楽しみながら書いているというのが非常によくわかりました。
そして歴史の謎とされる「裏切り者を決して許さない織田信長が叛服常ない松永弾正をなぜ許したのか?」という回答も用意してくれたのも嬉しいところ。その答えもなんともライアーらしいものだったのですが、そういったおふざけもライターの歴史に対する造詣の深さがあってこそ生み出せるものでしょう。

というわけで、非常に狭いコースぎりぎりを突いた作品であり、このゲームを楽しむにはいくつものハードルを越えなければいけないのは間違いない。少なくとも松永弾正の事績くらいは知ってプレイして欲しいと思うのですが、まあライアーファンならそれくらい知っているのは常識と制作サイドは考えているのでしょうね。それが良いか悪いかはぼくには即答できないのですが・・・

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