2012年10月24日

過去作には決して劣らない好作

再販ということで予想には取り上げられなかったのですが、今月は過去作の廉価版で注目される作品が数本リリースされます。
そのどれもがぼくにとって印象に残っている作品なわけですが、その中でファンに一番待望されていたのがもしも明日が晴れならば(ぱれっと)でしょう。一時中古価格が1万円の大台超えしていたくらいで興味があっても中々手が出しづらいゲームだったのですが、今回の発売によって多くのファンに手を取って貰えるかと思います(といっても廉価版が発売されるとのニュースが伝った途端に中古価格が暴落しましたが)。ぼく的にはそれほど高い評価は与えていないのですが、いろいろと考えさせられる作品だったということや原画の魅力(ぼく的にはこの作品がくすくす原画の最高峰と思っている)もあって心に残っていることは確かです。
他ではリアル妹がいる大泉くんのばあい普及版(ALcotハニカム)の動向も気になっていますが、一番お得感があるのが心あたたまる3つの物語 PULLTOP PLEASANT PACK 01(PULLTOP)でしょう。これも一時中古価格が高止まりしていた(これも現在暴落してしまいましたが・・・)遥かに仰ぎ、麗しのを初めゆのはなしろくまベルスターズ♪の3本がセットで楽しめるわけですから。
ただよくよく考えると、もはや定番といっていい名作がセットになっているだけに、この3本すべてをプレイしていないPULLTOPファン(もしくは藤原々々ファン)というケースはあまりないかもしれません。最新作で高評価のこの大空に、翼をひろげて が楽しめたので旧作も・・・と考えている人もいるかもしれませんが、原画家はもちろんライターも変わっているため同じ縮尺で見ると意外に合わなかったと感じてしまう可能性もありますので。
そういった意味でもこのセット品の購入を考えている人に最新作の1本前の作品である神聖にして侵すべからずが合うかどうかで考えた方がいいとアドバイスしようと思ったわけですが、そう自信を持って言い切るにはやはりオールクリアが必定というわけでしばらく中断していた本作を一気に(といっても2週間近く掛かったのですが・・・)終わらせてしまいました。PULLTOP作品ではマイナー感が強く批評空間での評価も決して高いとはいえないのですが、ぼく的には充分楽しめた作品でしろくまベルスターズ♪(のきららルート)が気に入った人ならばまずハズレはないかと思います。そういった意味でもこのゲームは一連のPULLTOP作品で見せる丸谷秀人の味が色濃く出ている作品であり、丸谷秀人入門というべき今回のパック作の購入を見極めるには最適だというぼくの予感は間違っていなかったと感じました。

そんなこのゲームの所感ですが・・・

一番評価の高いと思われるルートはメインヒロインである瑠波シナリオであり、猫庭町に住む人々が生き生きと描かれているといった意味では一番丸谷色に表れているのではないかと思います。ゲーム序盤や他のヒロインのルートで散りばめられた伏線も綺麗にまとめられていて、そしてその解決方法にも軽い驚きを感じさせてくれたのも好印象。PULLTOPらしい暖かさに溢れていて心地よい読後感をぼくにもたらしてくれました。
ただ一番気に入ったヒロインはというと操ということになるでしょう。批評空間のPOVに友情発恋愛行きというものがあり、ぼくが提案したことでも分かるようにこういったシチュエーションは大好物なわけですが、最近このPOVにズバリ当てはまるようなヒロインに巡り合っていなかっただけに久々に楽しむことができました。

というわけで充分良作といって差し支えないゲームで、他のPULLTOP作品と比べても遜色ないデキだと思うわけですが、前に述べたようになぜか評価が高くない。このギャップは一体どこから来ているのでしょうか。

まず過去作と比べて原画がやや劣るように感じられたのも一因と思われる点についてですが・・・
確かに原画家の仁之丞氏はこれまでの藤原々々氏と比べると経験値はともかく知名度・実績にやや見劣りすることは否めません。特にPULLTOPの過去作でSD原画を担当していたということもあり旧作ファンには物足りなさを感じてしまったとしても仕方ないかと思います。といってもこれは仁之丞氏の責任というより藤原々々氏の原画が良すぎたからでしょう。
ではもしも藤原々々氏が今作の原画を担当していたとしたらマイナー感を払拭できたかというと、あながちそう言い切れない部分はあります。
ぼくが思うにこのゲームの評価が今一つ振るわないのは世界観の広げ方にあるのではないかと思います。箱庭世界で展開されるためかシナリオが軽く、丸谷氏の過去作と比べるとサブキャラも瑠波シナリオ以外ではそれほど目立つシーンがない。そしてなによりシナリオを修飾するようなギミックの少なさがより軽さを感じてしまう原因と思われるのです。

ぼくはこういった軽い作品は好きなのですが、PULLTOPの過去作と比べると比較するとその無難な作りが見劣りに繋がってしまったのでしょう。もしこのゲームが他のメーカーからリリースされていたとすればもう少し評価が高くなっていたでしょうし、そういった意味でマイナーな良作という言葉が相応しいゲームと思います。

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