2013年08月30日

燻ってしまった設定

ぼくがデビュー作からずっと追いかけ続けている数少ないブランドの一つがアサプロなのですが、今回はその最新作であるひとつ飛ばし恋愛について語ってみたいと思います。

前に触れたかもしれないのですが、体験版を齧った段階ではこれまでのアサプロの作品と比べてやや落ちる印象が否めなかった今作ですが、プレイ終了後の感想もほぼ同じで正直デキについてはそれほど高いとは思えなかったです。
確かにヒロインを犠牲にしてまで笑いを取るアサプロのお家芸は健在で、クスリとさせられる場面はありました。それでもタイトルにある「ひとつ飛ばし恋愛」という設定が燻ったままほとんど活かされなかった気がするのです。この「ひとつ飛ばし」というテーマ。面白い素材でありながら実際に調理すると意外に難しく、その上全部のルートをそれで行うというのはかなりの冒険になるだけにアサプロの挑戦には心の中で驚きと共に喝采をおくっていたのですが・・・

ではなぜこの「ひとつ飛ばし」が厳しい言葉で云えば意味ないものに終わってしまったのでしょうか?

まず第1の誤算は主人公の設定というより性格によるものがあります。

女性に免疫がなく肉親や近親者という触媒を介さないと女性と会話が出来ない奥手なタイプの主人公。これなら「ひとつ飛ばし恋愛」という設定の意味があると思うのです。ただ今回の主人公。確かに家族と離れ男子校に通うなど一見女性に対しての免疫は薄いように思えるのですが、実際は肉親を介さなくてもヒロインと普通に会話をしているわけで、これでは「ひとつ飛ばし」の意味があまりないのですね。だから単に親しくなったヒロインが偶然肉親の知り合いに過ぎなかったように感じてしまうのです。

もう一つの誤算が攻略ヒロインよりも飛ばされた側のヒロインの方が魅力があったことです。

お笑い担当に近い姉のメグはともかく、妹の紅やいとこの阿知華・幼馴染の千乃は攻略ヒロインと互角あるいはそれ以上の魅力を放っています。しかもエロゲーで言うところのフラグらしきものを匂わせていたりするわけで、これではプレイヤーに鬱憤を溜めるなという方が無理というものです。「ひとつ飛ばし」という題材だけに本来ならサブヒロインを目立たなくしてヒロインを浮き出させるのが肝要なのに、ただでさえエロゲーのヒロインでは主役となりがちな妹や幼馴染を魅力的にしてしまっては「ひとつ飛ばし」の意味が薄くなっても当然のことなのです。

そんなこのゲームで「ひとつ飛ばし」のセオリーを守ったのが夏芽ルートでした。姉(メグ)の友人かつ悪友(恭次郎)の姉という何だか文章で説明しづらいのですが、そんな関係がもたらすドタバタっぷりがぼく的には面白く感じられました。まあサブヒロインのメグがお世辞にも攻略ヒロインとなりそうもない設定(性格)だったからかもしれませんが、その分夏芽の可愛さが引立ったのはプラスでやはり「ひとつ飛ばし」はコレでなければと思ったのですね。

ただ欲を言えば、サブヒロインが主人公を応援するような単純なものでなく、逆に主人公とヒロインの仲を邪魔するような(そしてそれが裏目に出て逆に仲が深まってしまうような)シナリオも欲しかったと思うのです。(最初碧里ルートがそんな展開になるのでは?と考えていたのですが全くそんな展開になりませんでしたし・・・)
やり方を誤るとヒロインやサブヒロインが嫌味っぽいキャラになってしまうかもしれませんが、お笑いに長けたアサプロのライターならそんな轍は踏まず上手くコメディに昇華できたはず。ぼくが折角の設定が燻ったと評したのも、そんな展開が欲しかったからなのです。

というわけで結構腐してしまったのですが、これはアサプロに対する期待の表れでありけっして凡作以下のゲームでなかったのは確かです。ただぼく的にはアッチむいて恋からやや面白さが頭打ちのように感じているので、次作あたりがメーカーにとっての正念場になるのではと思っています。

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