2013年11月26日

バカゲーとして成功したとは言い難いが・・・

美少女ゲームに於けるバカゲーというのは2種類あるとぼく的に思っていて、それは制作者が真面目に作っているのになぜかバカゲーとなってしまうもの(いわゆる天然)と、制作者側がプレイヤーを笑わせようと意識して作るものがあるわけですが、ぼくがどちらを好むかといえば断然後者となります。
ただこの狙って制作されたバカゲーというのがあまりリリースされないのですね。ライアーソフトもバカゲーメーカーとしての色が薄くなってしまったし、みなとそふとは寡作で純粋新作はあまり出さないメーカー。脳内彼女の作品は2本ほど手を出してみましたがどうもぼくの趣味には合わないし、唯一孤軍奮闘しているのがアサプロのみといってもぼく的には過言でないくらい。

そんなバカゲー受難の中、堂々バカゲーと名乗ってリリースされたらぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!(HARUKAZE)には発売前から注目していました。批評空間での評価は今ひとつで良作には程遠いものになっていますが、こういった系統の作品は人の評価というものはあまりアテにならなくて、趣味・嗜好さえ合えば個人的名作に成りえるのです。そういった意味でかなり期待してプレイしたのですが・・・

(ここからネタバレ)

ハイスピードラブコメディという煽りが物語るように、アクの強いキャラクターたちが総登場するという意味では確かにバカゲーといえます。メインヒロインであるルキナの傍若無人ぶりを始めキャラクターたちの動きが疾走感に繋がり、クセのあるテキストにしてはテンポは良好。またあれだけアクの強いヒロイン&女性キャラクターを登場させながら、キャラがかぶることなくそれでいてプレイヤー(ぼく)に嫌味を与えなかったというのはライターの才能でしょう。まあその分、男性キャラが少々足を引っ張っているかもしれませんが、それもぼく的には許容範囲。そういった意味ではキャラクター作りという点に関しては充分合格点を与えられるのではないかと思います。
ただあれだけバカゲー向きのキャラを用意した割には、ぼく的に笑えるといったシーンがほとんどなかったのは意外でした。まあこのあたりは笑いの方向性の違いと言ってしまってはそれまでなのかもしれませんが、ぼくの分析ではキャラクターが総出でボケるばかりで冷静にツッコミを入れるキャラが不足していたのが嗜好に合わなかったのではないかと思うのです。一見対抗格のヒロインで常識人であるエリカがその役を務めるかと思っていたのですが、エリカは他のヒロインのルートに入ると目立たなくなってしまうし、自分のルートに入ると逆に他のキャラが目立たなくなる(生徒会メンバーでないためか)というわけでその任には当たらないのですね。本来ならこういったアクの強いキャラが総登場するようなゲームの場合主人公がツッコミ役を務めるはずで実際それを行おうというフシはあるのですが、どうも冷静なツッコミが出来ていないのです。これは主人公のキャラクター性に一貫したものがないことも一因なのでしょうが、そう考えればこのゲームのライターは主人公のキャラクター作りについては失敗しているといえます。

ただこのゲーム。実のところ一介のバカゲーという括りで扱うには終盤やや違和感の出てしまうルートがあります。主人公とルキナの凄惨ともいえる過去が語られるルキナルートがその代表で、メインヒロインのルートでバカゲーとは違う面が強調されるところを鑑みるとライターがただのバカゲーで収めるには飽きたらなかったことが窺えるのですが、それが必ずしも成功したかと問われるとやや疑わしい。というのもルキナルート終盤の主人公は単純バカこれ極まりという行動を取るばかりで、不快にしか感じませんでしたから。まあイサミの可愛い部分が見られたのは望外だったかもしれませんが、その代わりルキナが浮かばれなくなったので差引きはゼロ。いや読後感を考えればマイナスだったように感じられて仕方ありません。
それよりこのゲームの一番の収穫といっていいのが稲穂・ギ・ひかりルートでしょう。彼女とのやり取りやイチャラブっぷりはこのゲームでぼくが一番笑えた部分であり、バカゲーらしいノリとシリアスもの混在も適度な割合であり読後感も良かったです。そう考えるとこのライターの得意なのはバカゲーらしいギャグの応酬なのではなく、ヒロインを可愛く見せるイチャラブ展開なのかもしれません。

というわけでデビュー作ということを考えればまずまず成功といった評価が妥当なところ。出来れば次回は変なシリアスを入れずに全ルートラブコメ一本で走ってもらいたいと願うわけですが、それはともかくアサプロのデビュー作であるめいくるッ! ~Welcome to Happy Maid Life!!~ も終盤のシリアスが不発に終わったことを後の成功に繋げたように、HARUKAZEもこの経験を次回作に生かしてもらいたいと思います。

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