2016年07月09日

正史に忠実なばかりに現れた瑕

これは何度も話していてまたかと言われるかもしれませんが、ぼくはいつも何本かのゲームを並行してプレイしています。
理由はというと、単に1つの物事に集中できない性格というのが1番だろうと思うわけですが、5本同時にプレイするというのはちょっと手を広げすぎなような気がしないでもありません。
もちろん5本同時にプレイといっても、進行速度は当然差が出てくるわけで、面白いゲームは進行が速く、詰まらないゲームは遅々として進まない。ただそうすると結局HD内には面白くないゲームばかりが常駐してしまうわけで、ゲームをプレイするのが苦痛で仕方ないというような羽目に陥ってしまうわけで・・・
それでは困るので、1本くらいは面白そうなゲームをプレイリストに混ぜることにしています。それをどう選ぶかというと、批評空間のデータを参考にしたりするわけですが、今回ぼくが満を持して積みゲーの山から選んだのはChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1- でした。

実はこのゲーム。例に漏れず、3年前の発売日当日に購入していました。それがなぜここまでプレイするのが延び延びになてしまったかというと、この月に購入した作品(グリザイアの楽園、お嬢様はご機嫌ナナメ、らぶおぶ恋愛皇帝 of LOVE!、Magical Charming!)が多くて、発売前それほど大きな期待をしていなかったこのゲームをプレイする意欲がかけていたこと。原画が他の作品より(ぼく的に)劣っているように感じられていたこと。発売直後から批評空間に感想が多量に投稿されていたこともありネタバレ投稿を目にしてしまったこともあって、変な先入観を持ってプレイすることを恐れたこと・・・などがありますが、まあそれは言い訳であって単にぼくが怠惰なだけなんですが。

そんなわけで今更のような感じでプレイしたわけですが、批評空間で1000件近くも感想が投稿されていることもあって、感想・意見が言い尽くされています。というわけでぼくの乏しいボキャブラリーで語るようなことはほとんどないわけですが、それでもちょっとだけ口を挟んでみると・・・

このゲーム。4章以降の言動もあってこれだけ評価の高い燃えゲーにしては主人公がダメという意見が意外に多いのですが、ぼくはどちらかというとゲーム開始直後の空気を読めない能天気としか思えない言動の方が気になりました。洗練されているとはいえない原画も手伝って、プレイしていてなぜこれだけ評価が高いのか首をひねったほど。
ただそんなネガティブなイメージが氷解していくのに時間はそれほど掛かりませんでした。1章中盤以降は物語に引き込まれていきました。それにつれて、それまであまり可愛く見えなかったヒロインたちが魅力的に感じるようになったから不思議です。
それがやや怪しくなりはじめたのが4章で、歴史ものとして忠臣蔵という物語を吉良側から見るというテーマは悪くないものの、それがややありきたりで意外性がなく牽引力に欠けるように感じられました。その原因は主人公の問題というよりもヒロインの方にあるのではと思うのですね。
そして5章も勢いは取り戻せず、ラストの大団円の仕方もハッピーエンドにするならあれしかなかったのかもしれませんが、やはり唐突感は否めない。とすると、このChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1- というゲームは3章までで完成していて4章・5章は水増しされたように感じられてしまうのです。
それでも全くつまらないというわけではなくて、付け足した部分として考えたとしてもまずまず楽しめたのは確か。それだけに4章以降のデキがさほどでなかったとしてもそれを理由に大きなマイナス点を付けようとは思いませんでした。

さてこの手の歴史人物女性化もので1番カギとなるのは、いかに正史との距離感ではないかと思っているわけですが・・・
もちろん正史など気にせず、大々的に歴史改変してしまうのも当然ありだと思うのです。ただこのゲームの場合、単に主要登場人物を女性化させているのに過ぎず、根幹部分はほぼ忠実に忠臣蔵をなぞっているというのが主眼になっているのですね。まあそこがこのゲームのミソであり面白さにも繋がっているのですが・・・ただ1つ気になる点があるのです。

それは浅野内匠頭長矩の刃傷事件で赤穂藩がお家断絶になった後、大石内蔵助が内匠頭の弟である大学を後継にお家再興を目指すのですが、ここで気になるのはゲーム中なぜ内蔵助が長矩とより関係が深い筈の阿久里でなく(CGすらない)大学を後継に選んだのでしょうか。もちろん正史ではその通りであり、阿久里(瑤泉院)は内匠頭の妻だった人で後継になれるわけはないのですが、正史をまったく知らない人からすると不思議に思ってしまう可能性は強いと思うのです。
ではなぜこういった齟齬が生まれるかというと、赤穂浪士だけでなく浅野内匠頭まで女性に設定してしまったためだと思うのですね。もし浅野内匠頭が男性とすると、家臣(赤穂浪士)の女性が惚れてしまわないわけがない主君ぶりを見せるわけで、それで女性に設定したのでしょうが、女性が殿様になれる世界ならば特に理由が書かれていない(例えば後継は男子優先等が語られていれば良かった)以上阿久里を後継に押すのが自然なように思えるのですね。

もしこのゲームが端から正史を無視するかのような展開を見せるならば、ぼくも気にしなかったと思うのですが、なまじこのゲームが正史に忠実なばかりにこういった瑕が目立ったというわけです。これは歴史人物女性化ものの悩みといえるのですが、このゲームのライターほどの手腕を持ってしても、これをすべて埋めるには至らなかったというのは、相当に難しいことなのだと思ってしまったのです。  

Posted by 7月の魚 at 05:31Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年06月27日

シナリオに期待するのは禁物

先日、既にプレイを終えた美少女ゲームを某ショップに持ち込んできました。
ここ1年以上、溜め込んだゲームの数はというと20本以上で、持ち込むのも一苦労。その苦労の甲斐あって若干部屋は広くなったような気がしないでもないのですが、、それでも積みゲーは数限りなくあって、まだまだプレイするゲームには事欠きません。

そんな積みゲー崩しですが、ようやく今年発売のゲームに手を付け始めました。(といっても今年は5本きりしか買っていないのですが・・・)その1番手は恋する乙女と守護の楯 ~薔薇の聖母~(AXL)です。

(ここからネタバレ)

AXL初期の作品群で一番の成功作といって過言でない恋する乙女と守護の楯 の続編ということで、古くからのファンにとっては期待していたゲームだったと思うのですが、何せ10年近く前の作品ですから当時どれだけプレイした人が生き残っているかは微妙・・・まあ中古やダウンロード版などで現在でもプレイするのは可能ですが・・・。本来続編を出すならもう少し前作の記憶がプレイヤーに残っているうちにリリースするのが常道ですが、まあこれはAXL側の事情もあるので詮索はやめておきます。ただこれだけ間が空いてしまうと、成功するのは厳しいのではと感じていました。

まあ発売からこれまでの批評空間のデータを見る限り、その予想は的中してしまったわけですが、前作もさして評価していない(というよりかなり辛口の評価を付けた)ぼくにとっては必然といっていいものでした。というより前作を貶しているならなぜ続編を買ったのかと問い詰められそうなのですが、これは前作がシナリオゲーとして見ると落第でも、キャラについてはなかなか良かったからですね。ぼくは前作をプレイする際、話の論理性や伏線を重視して読み進めていったために、貶すしかなかったわけですが、最初からキャラゲーとして読めば(実はバカゲーとして読むのも辛い)もう少し高い評価を付けられたかもしれません。そういった意味で復讐戦のつもりで購入したのです。

そんなわけで、それほど期待して購入したわけではなかったので、概ね批評空間での現評価もおおよそ納得できるものでした。そしてヒロインは魅力的とはいえないまでも、そこそこ可愛く感じられたといった意味ではまずまずでした。
ただ女装主人公ものに付き物といっていい、女装バレについては今回完全に開き直っていました。何せ1番バレの危険性が高い女装での水着姿も、すべて「アイギス社の特殊メイク」で片付けてしまうわけですから。だから女装主人公ものとしての機微については期待できません。そういった意味で前作と同じ主人公であるにも関わらず、彼の魅力に関しては落ちたような気がします。ただヒロインについてはそれほど悪くはなかったです。真愛のおバカさは微笑ましかったし、毒舌家の麻衣とのコンビは軽妙でした。AXLでは定番の青山ヒロインである莉里もボーイッシュな外面と乙女心な内面を併せ持っていて、こうしたヒロイン連の顔ぶれはまずまずといっていいと思います。

ただ(これは予想していたことですが)シナリオについては、まともに読んでいると頭が痛くなるか呆れるかどちらかといったレベル。メーカー発表を信じる限り長谷川藍氏が1人でシナリオを担当しているらしいのですが、まるで複数ライターがシナリオを書いているかのように、ルートによって設定が変わってくるなど辻褄が合わないところが多々あるのですね。
特に気になるのが敵キャラの設定。このゲームはルートによって犯人(ボス)が変わるのですが、それはまあ良いとしてキャラ設定まで変わってしまうのが困りもの。希望ルートで主人公に執着する楓先生が、莉里ルートではそんな気配も見せないのはいかにも不自然だし、すべてのルートで登場するカルキノスの見てくればかりのポンコツぷりも話を寒くさせています。希望ルートの敵陣営の作戦などお粗末といっていいくらいですし、いくらシナリオに期待してないといってもいかにも見所がなさ過ぎます。

(総括)
シナリオの酷さをキャラがカバーするという典型的なキャラゲー。というと当然得点は高くは付けられないのですが、救いはこのシナリオの酷さがヒロインの魅力を貶めていないということ。ソーニャはルートによってやや辛いところもありますが、他のヒロインに関してはまずまず。ただそれなりのレベルを誇るものの、シナリオの助けが無いためかプレイヤーを圧倒するような魅力は感じられませんでした。どちらにしても前作同様に事件の証拠や背景などミステリーものとして読むのは禁物で、あまり深く考えないようある程度アラを流して読むなどプレイヤーの努力を要することは間違いないでしょう。

そんなわけで、当初考えていたより辛辣な所感になってしまったような気がするのですが、プレイしていてイラついたりはしなかったのは事実。これより酷いゲームはいくらでもあるわけで、それらと比べればあくまで平均レベルのデキだったと思います。  

Posted by 7月の魚 at 04:39Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年05月11日

そろそろ買い替え時か

初めてパソコンがぼくの手元にやってきたのは、もう四半世紀も前のことになるのですが、その初代から数えて現在7代目となります。
最初の頃は当時の最新鋭機を購入(親にお金を出して購入してもらったため)したものですが、その最新鋭機が3年も経たないうちに、まともに通用しない箱になってしまったこともあって、最近はもっぱら低価格のパソコンを買いスペック不足が感じられるようになったら買い換えるというのがぼくのスタイルとなっています。
そのスペック不足をどう感じるかというのは、ぼくが気になったゲームが動くかどうかだけで、例えばレッスルエンジェルズSPECIALがプレイしたくて、内蔵HD付きのパソコンを購入したのはいい思い出です。そんなパソコンも5年後こみっくパーティー をプレイした時はまともに動かず・・・というかパソコンに内蔵されているHDの容量では、音声データをインストールできない・・・結局買い換える羽目になったということもありました。そして新しく購入したパソコンにをインストールし直したら、前のパソコンで2分は掛かっていたインストール時間が、一瞬で終了したのを見て、これまで使っていたパソコンがいかに時代遅れだったか思い知らされたものでした。
それから2代経ているのですが、その後はゲームの為にパソコンを買い換えたことはなくて、理由はというとパソコンが起動しなくなったためです。もちろんメーカーに修理以来を出せば復旧できる可能性はあるのでしょうが、パソコンなしの生活なんて耐えられないし、度台時代遅れのパソコンを修理するのも面倒なので、結果自己解決不可能となった時点で大型電気店に行くことにしているのですね。
そんなぼくのパソコンですが、7代目は2008年購入でおよそ8年経つというのにいまだ現役で動いています。先々代は5年、先代は3年で寿命を迎えているのに対し、ここまで頑張っているのは奇跡で、歴代最高記録を更新中なのです。まあ稀に負荷を掛けたりすると電源が落ちたりするのはご愛嬌ですが、それでも苦にするほどではありません。またゲームについても多少描画速度は遅いものの、プレイできないものはありませんでした。
これは、ぼくが最新のグラボや過大なCPU・メモリーを使用するゲームをプレイしないことによるものが大きいのだと思います。というのもぼくがプレイするのはAVGが中心で、過大なスペックを要求するRPGなどはほとんどご無沙汰となっているのです。実際このパソコンを購入した直後にプレイしようとした君が呼ぶ、メギドの丘で 愛佳でいくの!! のまななつは、カクカクと動きまともにプレイすることができなかったくらいなので、現在エロゲーをプレイするのにほとんど困っていないというのは、いかに高スペックを要するゲームに手を出していない証左といえるのです。

さてそんなわけで基本AVGばかりプレイしているぼくが、久々にプレイしたRPGがEvenicle -イブニクル- です。アリスソフトのゲームを購入するのはアリス2010以来ですから、およそ5年ぶり。といっても実際このゲームは積んだままインストールすらしていないので、実際プレイしたゲームとなるとGALZOOアイランド以来10年ぶりとなります。このGALZOOアイランドはかなり時間を忘れてプレイしたゲームで、同じような雰囲気をこのEvenicle -イブニクル- から感じて購入したのですが、実際プレイを始めたのは発売から1年近く経過したこのGW前からという体たらく。それでもプレイを始めてからは時間を忘れてプレイしていました。そうラスト前までは・・・

そうラスト前のボス戦の前でとうとうぼくのパソコンが音を上げたのです。しかも時間を掛ければ何とかなる程度のものではなく、不正終了を起こしてゲームが終わってしまうという最悪なもの。インストールするドライブを変えても発生する上に、3D性能が原因というメッセージも出ることから、こうなるとぼくのパソコン性能に原因があると判断するしかないですね。

そんなわけで、これを機会にパソコンを買い換えるか悩んでいるのです。Evenicle -イブニクル- のラスボスを倒すのだけを見る為に、パソコンを買い換える価値があるのかどうか・・・。
取りあえず、Evenicle -イブニクル-は中断して、何か他のゲームでプレイできないものが出たときに考えるか、それとも愛機の寿命が来るかしばらく様子を見ようと思っています。

そんなEvenicle -イブニクル- ですが、GW中はずっとこればかりプレイしていたくらい、どっぷり首まで浸かっていました。アリスのゲームはかなりイヤンな気分にさせられることが多いのですが、このゲームはかなりライトな仕上がり。GALZOOアイランドのプレイヤーは女の子モンスターの顔ぶれを見るとニヤリとさせられるし、難易度もそれほど高くない。それだけにラストまで一気に進めたかった気分だったのですけどね。  

Posted by 7月の魚 at 04:39Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年05月01日

久々に一気に駆け抜けたゲーム

今回は少し前にクリアした機関幕末異聞 ラストキャバリエ (キャラメルBOX) についての所感を述べてみたいと思います。
実はこのゲーム、その前にプレイしたつよきすFESTIVALをクリアしてからプレイを始めたのですが、前に手を付けていたゲームを追い越して一気に最後まで読みきってしまいました。ぼくは基本的に浮気性なので、いくら面白いゲームでもそればかりを掛かりきり(但しRPGやSLGのようなゲームは除く)にプレイすることはほとんどないのですが、この機関幕末異聞 ラストキャバリエは数少ない例外といえます。

この一気に読ませるということは基本的に褒め言葉として使われています。推理小説などは典型的な例で、犯人やトリックなどの謎が気になってラストまで読みきってしまうのはよくあるケースです。
ところがゲームの世界ですと、そう単純には言い切れないとぼくは思うのです。一般に小説よりも文章量が圧倒的に多いのがゲームで、これを一気にラストまで読み切ったとなると「それだけ文章量が少なかったのか?」となるのですね。
この機関幕末異聞 ラストキャバリエ というゲーム。エンドは6種類あるし、一本道の展開と言うわけではありません。そういう意味で文章量が少ないという指摘は当たらないのですが、このゲームのライターである嵩夜あやの代表作である処女はお姉さまに恋してるがそうだったように、共通パートが多くてスキップ機能を使用するとかなりの文章が飛ばされてしまうのですね。修理&彦斎ルートと一葉&沙乃ルートはその際たるもので、この2つのルートはラスト以外ほぼ共通なのです。他にもこの対になるルートとして龍真&以庵ルートと考ルート。土方ルートと近藤ルートがありますが、それもかなりの部分がスキップすると飛ばされることになるので、アッという間に終わってしまうような気がしてしまうのです。

といってもやはり次の展開が気になるからこそ先を読み進めたくなるわけで、ストーリーに対する牽引力はおとボクの頃から衰えがないといえます。ただ惜しむらくは本当ならメインヒロイン格であるはずの土方ルートと近藤ルートが1番味気なく感じられるところ。この2つのルートはほぼ史実に基づいて進んでいくのですが、ラストが狭義の意味でハッピーエンドとはいえなかったり、もう1つ史実に基づいている考ルート(沖田の恋人として一般に知られている女性の設定とは違うが・・・)があって、そちらの方が史実に近く、また俗に言うバットエンドに近い終わり方でありながら、新撰組の終焉や沖田の生涯を考えると近藤・土方ルートよりも良く感じられるのですね。これでは局長や副長の面目が丸つぶれと言わざるを得ません。

あと近藤・土方ルートが光らなかったのは、どちらも主人公にだだ甘のお姉ちゃんキャラだったこと。2人のルートが史実を追っていくものだったため仕方ないかもしれませんが、2人のキャラ設定が突飛なものに出来なかったゆえに、どうも2人の違いが大きな差として表れなかったのですね。その上、終盤までほぼ展開が同じとなれば差異が感じられなくても仕方ないところ。これでは2人のルートが凡作に終わるのは必然だったのかもしれません。

それに対し、修理&彦斎ルートと龍真&以庵ルートは嵩夜あや流の大胆な歴史IFが魅力でなかなか楽しませてくれました。一橋慶喜に開国論や公武合体を説いた幕末時代洋学研究の第一人者である佐久間象山が暗殺されなかったらというIF。大政奉還を成功させ武力による薩長による倒幕を(一旦)頓挫させる形となった坂本龍馬が、見廻組に暗殺されなかったらというIFは定番ながら、そこに一見2人と関係薄・・・むしろ龍馬暗殺犯人説に新撰組が候補となっていたくらい・・・な新撰組を大胆に絡ませたのが面白かった。こうした大胆な変更があってこそ、主人公を男性にしたのも意味があったと思うのです。
ただ修理&彦斎ルートは暗殺されたはずの芹澤賀茂が終盤突然登場したりと、少年ジャンプ顔負けの超展開を見せた上に、それに納得いく説明がなかったのはさすがにマイナス。こうした点は気にしだすと、どうしても面白さが阻害されてしまうのです。特にこのルートは瘴姫の謎について語られるなど、このゲームの本線であろうルートなだけに、余計にこうした力押しの展開は鼻白む原因となってしまうのですね。芹澤賀茂というキャラクターは近藤や土方よりも(このゲームでは)魅力あるキャラクターだっただけに、再登場させたくなるのは分からないでもないのすけどね。

そういった意味でバランスの良かったのは龍真&以庵ルート(&考ルート)でした。倒幕派だった坂本龍馬と新撰組を結びつけたりとIFものとしては1番こじつけが強かったルートですが、船中八策や勝麟太郎(海舟)との関係を上手くまとめ、また岡田以蔵を勝の護衛役として口利きしたエピソードなども上手く昇華させるなど、修理&彦斎ルートのような派手さはないですが充分楽しめました。逆に言えばぼくが1番最初にこのルートをプレイしてしまったからこそ、一気にラストまで走りきっていまった(そしてやや期待を裏切られる結果になった)要因なのでしょう。

(総括)

決して凡作などではなく、どちらかといえば良作と呼んでも差し支えない作品。ただスチームバンクとしての世界観でありながら、それを完全に生かしきれなかったり、肝心の近藤・土方ルートがパッとしなかったりと惜しいと思わせる場面が目立つのが難点。あと有栖川宮と和宮は恋人同士だったようだが、この世界では皇族の女性同士が恋人として認められるのか?といった点や、幕末四賢侯として知られた松平春嶽公はCGを見る限り瘴姫のようですが、とすれば福井藩の姫君がなぜ瘴姫になったのか?それともこの世界では女性でも藩主になれるのか?(ならば他にも女性の藩主がいてもよさそうですが・・・)などツッコミを入れだすときりがなかったりと、やはり文句なしの良作と呼ぶのが憚られるのは間違いないところ。そういった意味では名作になりそこねたという評価が1番似合う作品だったといえるでしょう。  

Posted by 7月の魚 at 05:05Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年04月03日

遺産のおかげかもしれないが・・・

今回はつよきすFESTIVAL(CandySoft)の所感をサラっと書いてみようかと思います。

一応前作のつよきすNEXTファンディスクという扱いとなっていますが、つよきすシリーズ10周年記念ということで、先代つよきすメンバーの後日談もおまけとしてあるのが嬉しい。もちろんその後日談も初代つよきすでなくライターのさかき傘氏が担当した3学期からとなるわけですが、実際面白かったのはシナリオ全般に亘って初代つよきすメンバーが登場するシーンというのが、NEXTの立ち位置を表していて何か物悲しくなってしまいます。

といってもメインコンテンツはNEXTの登場ヒロインのアフターと前回非攻略だった尽神吉祢(きつね)と新キャラである霧夜勝気の追加シナリオという構成である以上、やはりそれに触れないわけにいかないのですが・・・

まずきつねシナリオですが、本編で敵役というかウザキャラに近い存在だった彼女が追加ヒロインに選ばれたというのは正直驚きました。主人公であるナギに対し一方的な逆恨みともいえる憎悪を向けるきつねを果たしてどうヒロインとして昇格させるのかが注目だったのですが、プレイした印象では強引さを拭えなかった。もちろん男女の恋愛関係なんていうものは、どんな切欠で発生するか分かったものでないのですが、ぼく的にはきつねをヒロインとして見るのは少し苦しかった。それに比べるともう一人の勝気の方はヒロインらしく仕上がっていました。というより、本編のヒロインルートを含めても彼女がナギに1番似合いのヒロインらしく思えてなりませんでした。
というのも人間として未熟なところ(若いともいう)が多いナギを一番成長させてくれたのは彼女のような気がしたから・・・そしてそれと同じくして勝気も成長していくので、いい補完関係となっているのですね。例えばこれが本編のトゥルールートである澄香は結局成長しないままラストを迎えたし(本編の悪役である衣の小物ぶりが、今回のFDでより小物らしくなっているのは楽しいが)、子羽はナギを甘やかすのが主で成長させるという意味では不適だった。(もちろん2人がこれから幸せな人生を送ってくれるなら部外者が口を挟むことではないですが)それに比べると勝気はナギと一緒にボクシング対決に挑むことによって大きな転機を迎えるし、またナギも勝気によって少しづつ変わっていきます。そういった意味では本編を含めベストカップルではなかったかと思うのですね。

さてこのFDのもう1つの楽しみだった伝説世代(先代)との絡みですが、NEXTでは存在しか明らかにされず決して登場することのなかったメンバーが総出演してくれます。カニは背こそ伸びたものの相変わらずカニのままだったし、フカヒレは相変わらず一般人を踏みはずしてしまいそうなタイトロープを華麗にステップしてくれます。それでも彼らは決してあの頃の彼らではなく、年月を重ねた大人っぽさをそれぞれ醸し出してくれてます。主人公であるレオを含めそんな大人になった彼らが生きている世界は感傷深かったのですが、ただ各ヒロインのアフターはどれも容量は少なくて残念。それでもレオがどのヒロインと恋愛関係になるかでNEXTの交友関係がそれぞれ変わるのは、興味深かったですし、またNEXTの各ヒロインのおまけルートでも先代のキャラが出張していて、雰囲気的には楽しめました。

といってもそんな先代を引き継ぐのはタカヒロ氏が担当した初代つよきすでなく、当然ながらさかき傘氏が担当した3学期であるのは注意しておきたいところ。初代と3学期は一長一短あって優劣付けがたいのですが、レオがどのヒロインとも付き合わなかったNEXTの世界観においてレオの恋人の位置に一番近い存在であるのが素奈緒というのが興味深い。3学期で1番優れていると感じたのが素奈緒ルートだったので、レオと素奈緒が友人以上恋人未満の関係にあるというのはぼく的には納得できました。まあこれは趣味の問題かもしれませんが。

ただNEXTのヒロインを含めこれだけのアフターを用意できたところを見ると、本当にさかき傘氏は後日談を得意とするライターですね。もちろんヒロインのアフターということもあってハッピーエンドばかりですし、展開も似てくるのは止むを得ないところですが、NEXTだけでなくタカヒロ氏が作った初代つよきすの世界までそれほど違和感無くまとめ上げるところは流石といっていいと思うのですね。NEXTとひこうき雲の向こう側 (FLAT)は批評空間の評価ほど楽しめたゲームではなかったので心配したところもあったのですが、やはり腕利きのライターと再認識させられました。  

Posted by 7月の魚 at 22:47Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年03月24日

妹の立ち位置の差が問題か

前回に続いて相変わらず体調は悪いままですが、もう1本積みゲーを崩すことができました。(といってもかなり前からプレイは始めていたのですが・・・)微熱が残っていて、まともなプレイ感想となっているか心配なのですが・・・

さて、そのゲームは嫁探しが捗りすぎてヤバい(Hulotte)ですが、前作の妹のおかげでモテすぎてヤバいがぼく的には良作萌えゲーという評価だったので、発売前はかなり期待していたゲームでした。ただこのゲームも発売後の評価はイマイチのようで・・・不安たっぷりのスタートでした。

(ここからネタバレ)
(なお前作の妹のおかげでモテすぎてヤバいの核心にも触れていますので未プレイの人は注意して下さい)

前作はヒロインの設定や展開が妙にボクの琴線に触れてしまったわけですが、惜しむらくは真のヒロインとなるはずだった妹(メグリ)のシナリオが弱かったことがありました。それでこの新作での妹(希里乃)の立ち位置がどこになるのかがカギになるのではと思っていたのですが・・・

ぼくは最初、希里乃は妹の本分からほとんど離れることはなく、唯や明佳と同じくおまけシナリオにおいてサブヒロインを務める存在だと思っていました。というのも主人公が大昔結婚を約束していたヒロインの存在を探すために、田舎暮らしから離れ八神家の居候となることが明らかにされます。希里乃がその約束したヒロインとなることはあり得ず、主人公とヒロインを応援する存在だと思っていました。
ただシナリオを進めていくにつれて、それがだんだんと怪しくなり始めてきました。というのも希里乃は前作のメグリと違い主人公(兄)への想いをあまり隠そうとしないのですね。つまり隠しヒロインでなく、自ら表のヒロインに名乗り出てきているのです。
まあ前作のメグリも実際は叶とのWメインヒロインとなっていたわけですから、別に不満というわけではありません。ただ前作が他のヒロインも叶やメグリと同じとまではいかないまでもそれなりに可愛く感じられたのに対し、今作の八神姉妹や奈々華先輩はそれほど可愛く感じられませんでした。これは各々のシナリオにも原因があるのかもしれませんが、構成にも問題があったのではとぼくは思うのです。
前作はまるでコース料理のように前菜・サラダ・スープ・メインデッシュとヒロインの登場する順番が絶妙だったのに対し、今作はどうもメインデッシュ(希里乃)一本に絞りすぎて後の料理(ヒロイン)は適当にテーブルに出されたように感じられたのですね。

このメインヒロインに重きを置く手法は特に珍しいわけでなく(むしろ前作の方が珍しい)他の萌え系ゲームでもよく用いられるのですが、これが成功するには当然最終シナリオが飛びぬけて良くなければいけないのです。前作はメインヒロインの叶以上の存在として用意したはずのメグリが実際はパッとしなくて、他のサブヒロインと変わりないような存在となってしまっただけに、今作は希里乃一本に絞ってきたわけですがこれが思惑どおりにいかなかったというのは皮肉でした。というのも、残念ながらそれほど希里乃シナリオが面白いと感じられなかったことで、この時点で今作は凡作といって差し支えないデキとなってしまったといえるでしょう。

ではなぜ希里乃シナリオが面白く感じられなかったかというと、やはり構成に問題があったのではとぼくは思うのです。希里乃シナリオの序盤で八神姉妹の家に居候している主人公(兄)の下に希里乃がやってくるのですが、構成的にまずいと思うのです。本来ゲームの最初の主眼は主人公が幼い頃結婚の約束をした相手を見つけるというものでした。そしてその相手が瀬里香であることが瀬里香シナリオで判明するわけですが、折角のその余韻を壊すような形で希里乃ルートが始まるのはどうなのか。

もしぼくがこのゲームのライターなら希里乃ルートの開始時を主人公が八神姉妹と結ばれず、再び田舎に戻ることになったあたりから始めるでしょう。それが嫁探しという何とも怪しげな理由でやってきた主人公を何も言わず居候させてくれた八神姉妹への礼儀だと思うのですね。それが、まだ八神姉妹の恋の行方が決着しないうちに、とんびが油揚げをさらうような形で希里乃が八神家にやってくるのは、いくら真のメインヒロインといってもどうかと思うのです。
もちろん希里乃が主人公(兄)のことを想って八神家に来ても、八神姉妹は詮索したりしません。その上、希里乃が主人公と結ばれても、近親相姦と糾弾することもなく祝福したりします。この(結ばれなかった)ヒロインの心の広さはエロゲーではままあることとはいえ、主人公が告白してきたヒロインをしっかり断る(ふる)ことにより、不自然さを緩和していた前作と比べるとご都合主義すぎると感じられます。

そうした犠牲の上で成り立っている希里乃ルートはさすがに真のメインヒロインに相応しい内容となっているのは確かですが、ぼく的には他のヒロインのことを考えるとどうしても冷めた目で見てしまうのですね。こうして考えるとぼくが好きな妹ヒロインは、目立たず主人公(兄)を一歩引いたところから見守っているようなタイプなのでしょう。まあ現在と違い、実妹ヒロイン禁止の時代からプレイしているから、兄妹のカップルがおおっぴらに祝福されるというのに慣れていないということもあるのでしょうけれど・・・

総括すると今回はハーレム展開も実装しているなどエロにも力を入れているのですが、ヒロインに対する萌えが足りなく感じては威力も半減。前作がぼくのツボにあまりに嵌っていただけに、期待ハズレだったというのが正直なところです。  

Posted by 7月の魚 at 01:54Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年03月19日

ハーレム展開だけが救い

一昨日から体調を崩し、幸い熱は下がったものの頭痛は引き続き続いている上に、今度は身体中に原因不明の発疹が出るという始末。これも加齢からくるものかと諦めているのですが、幸い明日まで休みということで自室で休むことにしています。
といっても体中が痛痒くまともに眠れないというわけで、鎮痛薬で頭がぼーっとしている中、エロゲーを崩しています。まあこんな状態でエロゲーをプレイしていても余り楽しめないかもしれませんが・・・

というわけでまず最初に崩したのが、以前からプレイに取り掛かっていたLOVEREC. (ALcot)です。ALcotというと、最近は本家よりも姉妹ブランドであるハニカムの方が勢いがある気がしないでもないのですが、それでもClover Day's は久々に面目躍如といったところを見せてくれました。
そんな勢いでリリースしたのが昨年発売されたLOVEREC. で、Clover Day'sと同じくこのメーカーの看板絵師である仁村有志の他にちこたむと鳴海ゆうという人気絵師をそのまま起用。ライターも空下元にハニカム文庫で実績のある瀬尾順となかなか豪華な顔ぶれ。ぼく的には発売前はClover Day's以上に期待していたものでした。

ただ現実はというと批評空間のデータでClover Day'sから中央値で10点近く離されています。良作には程遠くどちらかといえば凡作に近いという成績は、当初の期待を思うと大きく裏切られたといっていいでしょう。

そんなLOVEREC.をようやくクリアしたのですが、確かにプレイした直後の感想はとても褒められたものではないというのが正直なところでした。
まずこのゲーム。登録POVのトップに「主人公がダメ」が鎮座していることを見てわかるように、主人公の性格がどうにも受け入れられにくいものになっています。といってもパッと見では多少ヘタレな部分はあるけれど、そこまでのダメ主人公でないように思えるのですが、カメラバカで妄想癖があり鈍感といったファクターが相乗効果となって、プレイヤーからするとどうにも受け入れにくい人物となっているのですね。
まあ主人公がカメラを大事にしていたからこそ、ヒトミが精霊といて宿ったといえるのかもしれないわけですが、このヒトミや幼馴染のチホリンはともかく、他のヒロインが本当にこの主人公に惹かれるかと思うとどうにも疑問なのですね。みゆきちは主人公の撮影の腕は買っていたとしても、なぜ最初から好意マックスなのかが分からないし、オズこと乃梨も兄である健一の支援があったとしても主人公に惹かれた理由がどうにも不明。というよりぼくが健一だったら、大事な妹をこの主人公と結ばせようとはしないでしょう。

まあ主人公がキモイのはともかく、トゥルーシナリオであるヒトミルートは別としても、他のヒロインのルートがラストでどれも似たような展開というのは明らかにマイナスでしょう。手抜きといってしまうと身も蓋もないのですが、主人公やヒロインがラストで濁流に飲まれヒトミに助けられるという展開ばかりというのは芸がなさすぎます。これではいくらヒトミルートに力を入れたとしても、全体的に見るとマイナス点を付けざるを得ないのです。それでもヒトミルートのデキがよほど飛びぬけていれば話は変わってくるのですが、他のヒロインを踏み台にするような形でヒトミを持ち上げられてもぼく的にはシラケるだけなのです。

トゥルーエンドを迎えると、タイトル画面が変わったりとハニカム文庫らしさを含んでいる作品なのですが、ゲームの内容もハニカム文庫と同じくフルプライスに満たないようでは良作とはとても呼べない作品となってしまいました。ただあえてプラス点を挙げるとすると、普通の萌えゲーだとハーレムルートが完全な別次元の話となっているのに対し、このゲームはきっちりハーレムルートをシナリオの全体像に組み込んでいた点です。そういった意味ではハーレム好きなプレイヤーにとっては至高の作品となる可能性がある・・・といっても、ぼくはハーレム嗜好が全くないので実際には良くわからないんですけどね。

というわけで短いですが今回はこんなところで・・・この連休中にもう1本くらいクリアできればと思っているのですが、体調と相談してぼちぼちと進めていこうと思っています。  

Posted by 7月の魚 at 10:35Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年02月22日

ツッコミ役不在が祟ったが

前回の記事でも予想していたのですが、やはり出走取消(発売延期)が出てしまいました。
しかも、ぼくが本命に推していた乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-面影レイルバックは5月と大幅に先延ばし。ここまで延期するということは、2月末の発売がとても間に合わないことなんてもっと早く分かっていたはずなのに、発売直前になっての発表なんてユーザーを舐めているとしか思えない・・・いや恐らくブランドにそんな意図はないのでしょうが、そう取られてもおかしくないという意味です。

これで2月のレースは無風状態になってしまったような気がします。それでも予約したゲームがあっただけまだマシなのかもしれません。先月は1本も買ってなく、何か物足りない気分だったので・・・

さて1本買ったならその分積みゲーを消化しなければならないのですが、ここのところ多忙なこともあってここ1ヵ月ほどクリアできたゲームはありませんでした。(まあ4本ほど同時進行させていたこともありますが・・・)
その同時進行させていたゲームの中から、一番最初にゴールテープを切ったのが恋春アドレセンス (Eclair)です。Eclairの処女作ですが原画やライターもこれがデビューという初物づくしの作品で、当然発売前に話題に上ることもなかった。何故このゲームを買ったのか一昨年の自分に聞いてみたいくらいで、当然崩すのも先送りだったわけですが、ただ予約特典のサントラに入っていたRita嬢が唄うOP曲がなかなかの好曲(ぼくの趣味にあっただけなのかもしれませんが)で、このOPを聴いているうちになぜかプレイしたくなってきました。

そんなわけで発売から1年余り経ってからようやく始めたのですが、プレイ当初は正直苦痛で何が面白いかサッパリ分かりませんでした。このゲームはいわゆるバカゲーに類するゲームなわけですが、そのギャグがあまりに単調なのですね。
このゲームには、バカゲーに付き物といっていい男の友人キャラというのが存在していません。その役目をヒロインを含む女性キャラが務めているのですが、これがすべて濃いキャラというかぶっちゃけ変人揃い。料理は得意だが饅頭ばかり食べている幼馴染に、兄(主人公)に横恋慕して淫液を垂れ流す妹。ペット扱いされる幽霊に、暴虐無人な姉等々これだけ濃いキャラが集まれば面白くならないわけがないと思うのですが、この作品ではこういった濃いキャラがただ力任せに暴れまわるだけで制御できていないことがギャグが空回りしてしまった理由でしょう。それにギャグがいわゆる下ネタが主で、後は幽霊である柊の成仏ネタに先輩で太めなところを気に悩む茉莉の減量ネタとバリエーションに欠けるのも単調に感じられた要因の一つです。もちろんこういった力任せのギャグも場合によってはアリだとは思うのですが、そればかりで押してこられるのはぼくの趣味ではないのです。

もちろんヒロインに汚れをさせるのがダメなんて言うつもりはありません。ヒロインをギャグメーカーにするのはアサプロの得意技で実際成功を収めていますし、上手く機能すればバカゲーとして楽しめたはずです。ただこのゲームは変人の存在が強すぎて、それに対する常識人がほとんど見当たらず、結果キャラが暴走を止められないのですね。ボケとツッコミがあってこそメリハリの付いた笑いが生まれるわけで、始終キャラがボケまくってるだけでは笑いが単調になっても当然なのです。

とここまでは貶してばかりだったのですが、実はこのゲームの対するぼくの評価はそれほど悪いものではありません。というのも単調なギャグが続くのは専ら共通ルートが主で、個別ルートに入ると単調だったギャグにメリハリが付いてきて回転が良くなってくるのです。
まあ幼馴染である叶衣ルートやいわゆる男友達的ポジションである泉ルート(と呼べるほど長くはないが)は共通ルートと大して変わりはないのですが、反面茉莉ルートの笑いの多さは出色でした。これはギャグメーカーを務めるヒロインの中で、唯一茉莉がキャラ設定に不自然さが目立たなかったことにあるのではと思っています。必要以上に自分の体型を気にして、物にならない減量ばかり挑戦している茉莉。もちろん本当にアンコ型の体型では引いてしまうのですが、腹まわりに一寸余裕がある程度なわけで、普通に考えればなぜそこまで気に病むのか不可思議なレベル。ややデフォルメされているとはいえ、こんな女性はどこにでも存在しているのではないかと思わせるのですね。そんな彼女の体重ネタは共通ルートではやり過ぎのように感じたのですが、個別ルートに入るともう一つ恋愛奥手という面も強調してきて、体重のことを言われ赤面したり拗ねたりする姿は逆に微笑ましく思うようになってきたくらいです。

もちろん個別ルートに入って笑いのバランスが程よくなったのは恐らく偶然で、恋愛描写を加えたおかげでギャグのクドさが緩和されただけとは思います。というのもライターがその気なら共通ルートでも同じようにギャグと通常状態のバランスを取れたはずですし、また正直茉莉ルートや柊ルートはともかく、レベルの高くないルートもあったりしたのもそう考える理由の一つです。ただこれがデビュー作と考えれば諸手を挙げて拍手は出来ないにしても、充分合格点は付けられるのではないかと思います。今後この路線で行くかどうかは分かりませんが、次回どれくらい進化を見せるか楽しみなブランドというのが、このゲームを終えたぼくの評価です。。  

Posted by 7月の魚 at 09:03Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年01月11日

真のヒロインとの関連性

前回に続いて今回も積みゲー崩し報告ですが、これだけ早く報告できるということはお察しのとおり小品(ファンディスク)・・・というわけでキミのとなりで恋してる! ~The respective happiness~ (ALcotハニカム) の所感です。

本編は名作とまではいかないまでも、ヒロインの可愛さとHシーンに見所があって間違いなく良作と呼べるだけの内容は持っていたと思います。そんな作品のファンディスクですが、内容はヒロインと結ばれてからのアフター(後日談)が主でそれほど奇をてらったものではありませんでした。
そんなヒロインのアフターですが、一番冷遇されているように感じられたのが莉奈だったので、本編で莉奈押しだったぼくとしてはやや残念といったところ。

といっても莉奈アフターの内容については涼香やなぎさと比べて、さほど劣るとはいえなかったです。ただ本編で見せてくれたレイプ目の衝撃や、失神いている莉奈相手にまるでダッチワイフのように性交をしまくるなどの凌辱顔負けのHシーンを考えると、今回のHシーンについてはそれほど驚きはありませんでした(まあぼくの感覚が麻痺しているだけかもしれませんが・・・)。これは涼香のHシーンでの24時間耐久性交決戦や、なぎさのバニーなど他のヒロインのHシーンも強烈になってきて優位性が無くなってきた影響もあったかと思います。ただ本編での秋人(主人公)とのこれまでの距離感とそれを埋めるような激しい(一方的)な性交がぼくの笑いのツボ(莉奈にとっては迷惑この上ないかもしれませんが)に入ったので、余計にそう感じてしまったのかもしれません。

ただそれより、莉奈を不遇に感じてしまったのは、ライターであるおぅんごぅる氏の(おそらく)一押しであろう妹の恵との関連性です。恵との関係の強さはなぎさや涼香に劣るどころか一番であるはずなのに、3人のメインヒロインのクリア後に解凍(開放)される恵シナリオ(2本目)を見ると一番関係が弱く感じられてしまうのですね。
涼香は恵との関係は薄いものの姉の彩香が恵の才能を看破するなど物語の重要なファクター役を果たしています。そしてなぎさは恵シナリオで秋人となぎさが結ばれている世界となっているように、恵にとってライバル役という大役を務めています。それに比べて莉奈の不遇さ(勝彦視点で語られるように、彼女はそれを不遇と思わないところにぼくは惹かれるのですが・・・)は何なのか。別に勝彦ルートを下に見るわけではないですが、(恋人であるゆかりのマゾ体質を相手する勝彦の苦悩ぶりは微笑ましかった。出来ればその体質を直すのに奮闘する勝彦をもっと見てみたかったくらい)やはりこのゲームの影に納まっていない気もするが)の主役である恵(シナリオ)への関わりの薄さを考えると、もう少し光が当ててあげても・・・と思ってしまったのです。

まあ総合的に見れば優秀なファンディスクと言えますし、アフターの進行度でプロフィールが少しづつ変わっていく趣向も楽しめました。そしてこのゲームのもう一つの顔であるHシーンに関しても、本編ほどの新鮮味は感じられなかったけれど、萌えゲーとして考えれば上々の部類といえるでしょう。特にエロに関しては本編で一番劣ったように感じた涼香が今回大きく巻き返してきたように感じられたのは意外でした。ただ繰り返しになりますが、その分莉奈のHシーンがやや頭打ちに感じられたのは残念といえば残念といったところです(まあこれはぼくの嗜好によるものが大きいのですけれど・・・)。  

Posted by 7月の魚 at 00:29Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2016年01月03日

手放しで褒められなかった理由

明けましておめでとうございます。
今年は時間を作って、更新頻度を少しでも上げようと思っていますので、よろしくお願いします。

さてこのところあまり肩の凝らない萌えゲーばかりプレイしているぼくですが、年末年始の多少時間が取れる時くらいはシナリオに軸を置いたゲームを・・・ということで選んだのがフェアリーテイル・レクイエム(ライアーソフト)です。昨年7月に発売したゲームで、いかにもライアーらしいゲームという触感。早々にファンディスクも発売されるなど評価も上々なのですが、ぼくの好むライアーらしさというのは天野佑一や岩清水新一といったバカゲーであって、この路線のゲームはほとんどプレイしていないのですね。だからぼくの嗜好に合うかどうかは未知数といったところでした。


(ここからネタバレ)


そんな若干の不安を持って始めた今作品。フェアリーテイル・シンドローム(お伽噺症候群)という病気を患った患者を隔離する病棟を舞台とした物語・・・という出だしで始まるわけですが、ぼくがこのゲームで一番重要であろうと思った謎は「主人公がお伽噺症候群に罹患していないのになぜこの病棟に隔離されているかということです。記憶を取り戻すことが目的ならば主人公と身近な人物(家族)等と一緒に生活するのが相応しいはずだし、もし主人公が家族のいない孤児だったとしても、記憶喪失ならばもっと他に相応しい施設があるだろうしこんな怪しげな施設に入所しないはずですから。
だから主人公がこの施設に入所したのは何か深い理由がある筈なのですが、ぼくが一抹の不安を持ってしまったのは、この重要な謎が果たして最後明かされるかどうか分からなかったからです。
もしライターが実績がありぼくが読んだことのあるライターならそんな不安は感じなかったと思うのですが、今回のメインライターである海原望氏は聞いたことのないライターなだけにそう感じてしまったのです。つまり主人公をあえて名無しの少年にしたのは、グレーテルでいうヘンゼル役。オデットのジークフリート役と、単にどのヒロインの相手役を勤まるためだけの後付けの設定での記憶喪失だったのではないかと・・・

ただこの不安は杞憂に終わりました。ライターはぼくが考えていたとおり、主人公についての伏線をこのゲームの一番の謎として用意していたからです。確かに他の謎(かまどの中で発見された焼死体やヒロインの中に一人いる罪人-ツミビト-等)の明かされ方についてはやや拍子抜けした部分はありますが、ぼくの見る限りは大きなアンフェアはなかったし、枝葉の部分の謎の解明方法に多少不満があったとしても大きな瑕にはなっていないと思います。

とここまではべた褒め(この程度の賞賛でもぼくにとってはべた褒めなのです)したのですが、このゲームをプレイして正直喝采を贈る気分にはなれないのは、ゲームに於いて重要なカギを握るゲルダは別として、他のヒロインの個別シナリオが弱く感じられたこと。そして福祉施設による虐待というあまり気分のよいテーマではなかったことが挙げられます。
まあ前者はともかく後者については、はっきりぼくの言いがかりと認めます。実際ミステリーでも理不尽な殺され方をする被害者は存在する(まあ意味なく殺される被害者というミステリーを決して賞賛はしませんが)し、ましてこのゲームはホラーと謳っているわけですから。ただ病院・介護福祉施設や孤児院等で大小さまざまな虐待が行われている事実を知っているぼくとしては、正直このシナリオに対し傷をえくられるような気分になったのは事実です。それだけにそういった傷を癒すようなラストを求めていたのですが・・・

実をいうとぼくはラストでイケノさんが味方になって主人公たちの味方になって脱出するのを積極的に援護してくれるという展開を予想していました。ただイケノさんは黒の少女の存在も信用せず、最後まで施設側の人間としての立場からなかなか踏み出そうとはしませんでした。まあ最後告発してくれましたが・・・それは後日談として明かされただけで、物語中で本当の悪人がどのような末路を辿ったかについては不鮮明でした。ぼくは内部の人間が施設の暗部を物語中でしっかり告発してくれた方が、読後感はよりよかったような気がしてならないのです(趣味の問題かもしれませんが)。

そういった意味で爽快感がハッピーエンドにはなく、逆にバッドエンドの方こそが正ルートのような気がしてしまう・・・といっても真のヒロインであるゲルダにとって本人の気持ちはともかく、あのラストはぼくにとって一種の寂寥感が流れてしまい読後感はやはり良くはなかった。そう考えると謎の解明はともかく、もう少しラストに工夫が欲しかったような奇がするのです。もし批評空間で得点を付けるとしたら当然80点以下にするわけにはいかないのですが、満足度については高いとはいえない。まあそういった読後感や不可思議さがホラーの魅力だったとすれば、ぼくの読み方感じ方の悪さが原因とするほかなく、こういった作品を楽しむ資格がないのかもしれないのですが・・・  

Posted by 7月の魚 at 11:24Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年12月29日

購入本数が減った理由

気がつかないうちに師走を迎え、今年も終わりに近づいています。
個人的には昨年に続いてろくでもない1年でしたが、まあ現在の仕事を辞めない限りこれが標準となりそうなので置いておくとして、辛かったのは昨年以上にコラムを更新する頻度が低下してしまったことです。
この一番の原因はエロゲーをクリアする速度が非常に遅くなってしまったことによることなのですが、それにも増して気になるのはエロゲーの購入本数自体も減ったことです。
実際ここ数年、エロゲーをプレイすることより購入することの方が趣味になっているのでは?と思うこともあり、全盛期と比べ購入本数にさほど衰えがないことが心の支えになっていたのですが、今年発売されたゲームの購入数は16本と月平均2本を割り込みました。全盛期は月平均2.5本以上は購入していたことを考えると、激減とまではいかないまでもかなり購入量は減っています。そんなわけですから購入していない月もさほど珍しくない状態に・・・

まあその16本中、まだクリアしていないゲームを含め手をつけたのは6本と過半数に達していないのですから、積みゲー数の減少については何の寄与もしていないのですが、それはともかくなぜ今年に入ってこれほど購入量が減ってしまったかというと、原因はいくつも考えられるのですが・・・

一番の理由は予約するゲームが減ってしまったことが挙げられます。
元々ぼくは予約してゲームを買うのが主で、発売後に評価が高いゲームを中古等で購入するということは滅多にしないのです。これは積みゲーを多量に抱えている身で、予約しないような興味薄のゲームを後追いするのは気がひけるというのが理由なのですが・・・

ではなぜ予約しなくなってしまったかというと、これは単純な理由で予約してまで購入しようと思わせるゲームが見当たらないからです。特に今年は購入前プレイすることを考えるとワクワクしてくるようなゲームは皆無だったといっても過言ではないくらいなのですね。
ただよくよく考えると、ここ数年そんな期待して予約するようなゲームは年に1本あるかどうかといったくらいなのですね。僕自身購入する前からモチベーションを高めて待っていたゲームといえば一昨年発売の大図書館の羊飼い a good librarian like a good shepherd (オーガスト)が最後だったのではないかと思います。つまりぼく自身大きく期待していないゲームでも、何か良い材料を探して予約しているケースの方が圧倒的に多くて、予約数が減ったこととゲーム発売前の期待度について因果関係はあまりなかったのですね。

とするとぼくがゲームを予約しなくなったのは他に理由があるからで、実を言うと一番の原因と思われるのはいつもゲームを予約していた名古屋駅の構内にあった某Sショップが系列電気店の4階に移転してしまったことによるものなのです。
旧店舗ですと、仕事帰りに名古屋駅で途中下車して5分くらい歩けばショップに立ち寄れたので予約も簡単に出来たのです。それが新店舗ですとあと10分は余計に歩かなくてはいけない・・・これが夜勤明けの疲れた体には結構堪えるのですね。実際途中下車して新店舗に向かおうとして、途中で断念しそのままバスに乗って帰ったことも2度や3度ではないのです。
それで最近は大須の某ショップで購入することが多くなった(特典にこだわらなければこちらの方が安く買える)のですが、大須に立ち寄るのは帰る方向からすると回り道になってしまうわけで、旧店舗のように気軽に立ち寄ることはできないのです。それで予約本数も減り、また発売日直後に未開封中古を購入する機会も減ってしまいました。

このままですと来年はつきに1本購入できるかどうか・・・というよりエロゲーの購入自体止めてしまった方がいいような気がしないでもないのですが、細々でもエロゲーのプレイは続けていくつもりではいます。まあ今の手持ちの積みゲー数と崩すペースを考えると3~4年は充分保つだけの備蓄はあるんですけどね。

最後まであまり締まらない話になってしまたのですが、では皆さん良いお年をお迎え下さい(ペコリ)。  

Posted by 7月の魚 at 00:35Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年12月05日

豪華声優陣による抜きゲー?

最近積みゲーが全く崩しきれていません。
まあ最近は購入本数も1本買うのが精々といったところですので、それほど在庫は増えては居ないのですが、11月は久しぶりに複数本購入したということもあって、そろそろHD内に燻っているゲームをクリアしていかなければなりません。
ということで、疲れた体に鞭打ってようやくクリアしたのが、姉小路直子と銀色の死神(みなとカーニバル)です。本家つよきすのタカヒロ氏とそれ散るの王雀孫氏という人気ライターがタッグを組んだとあって、発売前から話題になっていた作品・・・にしては発売後の評判が芳しくないのが気になるのですが、ただミドルプライス作品ということで短時間でクリアできそう・・・ということでチョイスしたわけですが。

序盤から中盤をプレイしてみて批評空間の中央値が低迷している理由が分かってきました。決して箸にも棒にも掛からないというほどつまらないわけではないのですが、つよきす俺たちに翼はない第2章のような笑いを期待した人に応えるデキだったかというと、とてもその域には達していなかったからです。
まあタカヒロは作品中つよきすの評価が飛びぬけていて、みなとそふとの旗揚げ作品となった君が主で執事は俺では正直空振りに終わった感が強かったことを考えれば、今回の成績は予想できたかもしれません。というのもみなとそふと最大のヒット作というべき真剣で私に恋しなさい!は豪華声優陣を含めた力押しで高評価を勝ち取ったようにぼくは思っているのですね。そう考えると今回のミドルプライスというポジションはタカヒロにとっては向かなかったのでしょう。確かに今回も多くのキャラクターが登場し声優も有名どころを揃えてます。ただミドルプライスという縛りがあったせいかキャラは多彩なものの設定に深みが感じられないのですね。

主人公がやたら好かれまくるというのはエロゲー的にはアリだとは思うのです。ただ年上女性キャラだけに全員に無条件に好かれるというのはちょっと違うのではないかと思うのですね。もちろん主人公の新九郎はプレイヤーを不快にさせるようなキャラではないし、メインヒロインたちに限っては好かれるようになった理由についても描かれています。ただ他のヒロインに関しては特に過程はほとんど描かれてなくて、単に主人公が生来備えている能力によるものという説明に終始してしまっています。これなら抜きゲーでありがちな、フェロモンによるものとかいうごり押しの設定の方がまだ理解できるような気がするのです。

と、こうして考えていくと、もしかしたらゲームの主眼は「一般作でも活躍している豪華声優陣競演による抜きゲー」のような気がしてきました。確かにエロシーンは心配されていた声優さんの演技を含めて頑張っている印象は強く、サブヒロインの大多数にもエロシーンがあるなど並みの抜きゲーと遜色ないくらい内容を誇っています。もし主眼がそうならシナリオの内容について不満を並べるのは見当違いというものです。実際キャラの会話も常時高レベルとまではいかないまでも、テンポは悪くなく、抜きゲーにありがちな空虚な笑いとは無縁でそれなりに楽しめました。

というわけで、ライターがタカヒロ氏一人だったなら満足とまではいかないまでにしても納得できたと思うのです。それにこういった声優陣を使った抜きゲーというコンセプトはいかにもタカヒロ氏が好んで作りたがりそうなゲームなのですよね。ただぼく的にはライター陣に王雀孫氏の名がある以上そう言った内容とは違うものを期待してしまうわけで、ゲーム全体に王雀孫らしさをほとんど感じさせるところがなかったのは残念でした。タカヒロ氏のホームグラウンドで戦ってしまったから仕方なかったかもしれませんが、王雀孫氏のテキストに期待していた身からすればホームチームの引き立て役に終わってしまうのではなく、喰ってしまうくらいの活躍をして欲しかったというのが正直な気持ちで、そういった意味では残念なゲームでした。  

Posted by 7月の魚 at 09:08Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年10月04日

予想に反し雰囲気重視に

今回はぼくが初めてプレイしたあっぷりけ・・・というよりオダワラハコネ&桐月作品である花の野に咲くうたかたのについての所感を書いてみようかと思います。

初めてといっても、実のところコンチェルトノート黄昏のシンセミアは発売日購入したまま積みっ放しとなっていて明らかにプレイ順は逆なのですが、ネタバレ情報が耳に染みていてプレイするモチベーションが低下してしまったコンチェルトノートを崩すのを待っていては、いつプレイできるか分からない。また今作品が面白ければ過去作を崩そうとするモチベーションも湧いてくるかもしれない・・・と思ってプレイを始めたのですが・・・

ただこの作品。過去のハコネ&桐月作品と比べると、批評空間での中央値が明らかに低い。黄昏のシンセミアからおよそ5年もの間隔が開いてしまったためファンの期待があまりに高くなってしまったのか、それともブランクの長さ(といっても2012年にねこにゃんとコンビを組んだ紅蓮華(エスクード)というゲームがありますが)が響いたのか分かりませんが、あまり大きな期待をしてプレイしないほうが良さそう。といっても、これまで桐月氏が得意にしていると思われるジャンルである伝奇ものはどちらかというとぼくは苦手で、今回は伝奇色が薄いとあって設定的には逆に楽しめるのではないかという気もしていました。

そんなこの作品。プレイ当初の感触ではどうやらメインヒロインである桜花が優遇されていて、他のヒロインは添え物(といっては言いすぎか・・・)のような雰囲気が漂っていました。ただぼく的に人外ヒロインには食指の動かないことが多くいのですが、ヒロイン萌え主体のゲームとして見るのでなく幽霊が主人公の近辺で起きるちょっと不思議な事件を解決するというコンセプトで見れば悪くなさそうに思えたのですが・・・
ただミステリーとして考えるとやや微妙なのですね。序盤は桜花が安楽椅子探偵として事件を解決していくわけですが、事件的にあまり盛り上がらないまま終わっていくことが多いのです。ただストーリーが全く面白くないというほど酷くはなくて、何より雰囲気的にいいものがあるし、ヒロイン陣にハズレがなく良質の萌えを感じさせてくれたのは意外といえば意外。これは最初の桜花以外のヒロインに期待できないとの予想がいい意味で外れました。
(恐らく最初にルートに入る)薬師涼子は定番といえる健気な後輩キャラといった役回りですが、声優さんが得意とするキャラということもあって、シナリオの深みはなかったもののまずまず楽しめました。続く井之上麗奈は勝気な幼馴染というぼくの大好物であるヒロインということもあって楽しめないはずがないといったところ。実際シナリオも主人公と過去因縁があった波多野美奈の関係や麗奈と父親との確執を絡めながらなかなか快調に進んでいきます。読後感だけ考えればこのルートが一番ぼく好みだったように思います。
この雰囲気がやや怪しくなってくるのが、(順当なら次にプレイすることになる)鵲(かささぎ)雫ルートからで、中盤まではともかく終盤主人公と雫が鏡の世界に囚われるという展開は今後の伏線のことを考えれば必要だったのかもしれませんが、これまでの雰囲気を壊してしまって逆効果に思えました。それは続く藤宮汐音ルートも同様でこれも石に関する伏線に囚われすぎて、主人公と汐音の大事な初体験シーンを台無しにしているしあまり買えない。こうした犠牲の上に成り立っている桜花ルートはさすがによくまとまっている(といっても伏線の解明法についてはやや疑問点はありますが・・・)のですが、それでもあっさりしているのは確かでプレイ後に何か物足りない感が残るのです。

そういった意味では批評空間でやや低迷(それでも中央値を考えれば立派なものですが)気味の評価も分かる気がします。内容的にも名作級にはほど遠いと言わざるを得ません。ただ丸っきりの凡作と貶めるほどのゲームではなかったのは確かです。いや雰囲気よくプレイできたという意味では、良作といっても過言でないくらい楽しめたのは事実。それに久々にオダワラハコネ氏(波間の国のファウスト以来)の原画を見たのですが、非常に進化していたことにも驚かされました。もはやベテランの域に達している原画家さんですが、まだまだ進化を続けているという点は流石だと思います。ただ少々残念だったのは冒頭や序盤での探偵役としての桜花はキャラ的に魅力的だったのですが、ヒロインとして見ると魅力が薄くなったような気がしてならないのです。まあこれは最後萌えからシナリオに重点を置いていったためではないかと思ったりしたのですが、それよりもぼくが人外ヒロインが苦手という嗜好の問題が大きいかもしれませんね。  

Posted by 7月の魚 at 19:34Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年09月23日

誰がメインヒロインを務めたか

今回は昨年末に発売された紙の上の魔法使い(ウグイスカグラ)についての所感を述べてみたいと思います。
制作発表直後はライターの前作(運命予報をお知らせします)を気に入った人以外ほとんど注目していなかったという記憶があるのですが、体験版公開以降は徐々に注目され、発売以降は賛否両論の意見から同月発売の話題作月に寄りそう乙女の作法2(Navel)以上の話題を呼ぶまでになりました。
今ではその論争も収束したように感じるのですが、それだけ賛否両論の意見がありながらも批評空間での中央値が80%をキープしているというのは、一介の凡作ではないと思っていました。(まあ実のところ体験版を少し齧っていたわけで、ただの作品ではないと思っていましたが・・・)逆に言うと冒頭の勢いが続けばまず間違いなく良作以上の評価を得るはずで、なぜ批判されるのか不思議に思えたくらいだったのです。

(ここからネタバレ)

そんな冒頭の「ヒスイの排撃論理」では、ミステリ調でシナリオが展開されていきます。妃が披露していくミステリ小説論などは、推理小説好きにはニヤリとさせられるものでしたし、犯人についてもほぼ予想通りながら動機については意外性がありました。何よりこのゲームで重要な位置を占めるかなたをプレイヤーに印象づけることにおいて、優秀なプロローグだったといえます。
そして次の「ルビーの合縁奇縁」ではメインヒロインである夜子にスポットライトを当てます。冒頭からツンデレ風味を漂わせている夜子ですが、本心なのか魔法の本に演じさせられているのかプレイヤーにもそして夜子自身でも分からない展開は、非常に惹きつけられました。
そして次の「サファイアの存在証明」では妹の妃について語られます。主人公に対する妃の感情は表面冷たく内面は激熱であり苛烈ともいえるもので、このゲームの核心に触れ始めていくルートなのですが、実はこのゲームの面白さはこのあたりから緩やかに下降していくとぼくは思うのです。これはこのゲームの悪役的存在であるクリソベリルの存在が明らかになるにつれて低下していくので、一見彼女の存在が下落の要因ように思えるのですが、この見解はクリソベリルにとっては心外なものでしょう。というのもこのゲームが竜頭蛇尾(というのは明らかに言いすぎだが・・・)のように感じられてしまったのは、キャラクターよりも物語の構成にあるように思えてならなかったからです。

というのもこのゲーム。ルート終了後にヴォーカル曲どころかエンドクレジットすら流れないのですね。特に最初にクリアする理央ルートや次にクリアするであろう妃ルートの収束は必ずしも読後感が良いものではないだけに、エンドクレジットが流れないとどうにもバッドエンドのように感じられて仕方ないのです。
もちろんこれらのルートが正真正銘のバッドエンドならば当然であり口を挟むことではないのですが、ライターの狙いはそうではないはず。ならばプレイヤーにそんな勘違いをさせる必要はなかったと思うのです。設定や伏線はよく考えられていただけに、こういたソフト面の弱さがそのまま作品の評価を低くさせてしまったのは惜しいとしか言いようがありません。

さてそんなこのゲームのメインヒロインとは誰なのでしょうか?

もちろん一番目立つ扱いを受けている夜子であると多くの人は答えるでしょう。ただよく考えると、夜子ルートはトゥルーエンドではないのですね。最後までプレイすると分かるのですが、一見メインヒロインのように思える夜子が実のところ他のヒロインの盛り立て役に過ぎないというのがこのゲームが凡百の萌えゲーとは一味違うところなのですが・・・。(ただ夜子中心に物語が動いていくわけで、そういう意味ではヒロインと言うよりもう一人の主人公というべきかもしれません)

そんなこのゲームのメインヒロインは2通りの解釈ができます。まず一人目が一番最初に主人公(瑠璃)と両思いになったかなたであり、そして2人目が生ける瑠璃と文字通り最後まで添い遂げることとなった妃となります。
確かに妃の死後、瑠璃はその後を追ってしまうわけで、それ以降は紙の上の存在でしかないということを考えれば妃がメインヒロインという主張は理にかなっています。
ただ物語りは妃の死後も続くわけで作品全体を考えれば、最後まで瑠璃への思いを変えないでいたかなたがメインヒロインと考えるにもごく自然な考えだと思うのです。ぼくはかなたが表のメインヒロインで妃が影のヒロインと思っているのですが、批評空間の感想をざっくり見ていると、このゲームを高く評価している人の多くは妃をメインヒロインと考えているようなのですね。
生ける姿を表さなくなってからも、なおも影響をに残し続けるヒロインだからこそ、妃は多くのプレイヤーに印象深いものになったのでしょう。そしてそれ以降の物語は魅力あるキャラクターが櫛の歯がかけていくように抜けていき、伏線消化という点では意味あったとしても面白さという点では落ちてしまったから余計にそう感じるのかもしれません。そしてトゥルーエンドも物語の着地点としては落ち着くところに落ち着いたといえるのですが、それでもこれまでクリソベリルが所業を思えばプレイヤーが釈然としなくても仕方ないところ。といってもう一方のかなたエンド(ハッピーエンド?)もやはり喉に小骨が引っ掛かったような違和感を覚えるのですね。

とすると妃がメインヒロインでいいのではと思うのですが、それでもぼくはかなた推しなのです。これは体験版の冒頭部分にあまりに惹かれてしまったこともあるのですが、夜子の頑なな心へ影響を与えたかなたの一途な思いに心打たれてしまったことの方が大きいです。瑠璃だけにスポットライトを当てるなら妃をメインヒロインとしてもよいのですが、もう一人の主人公といえる夜子のことを考えればかなたの方に軍配を上げた方が良いと思うからです。

さて最後になるのですが、このゲームを色鮮やかにさせたのは、曲数こそ少ないものの印象に残るBGM。そして原画でしょう。一つ間違えると陰惨な方向に傾いてしまいそうなこのゲームを、プラス方向に向かわせたのは決して高いレベルとはいえないまでも明るく萌えを強調した原画に助けられたと思うのです。そういった意味では決してシナリオだけが目立つゲームではなかったと云えるでしょう。  

Posted by 7月の魚 at 04:35Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年08月22日

次は得意の土俵で

今回はASa projectの最新作であるプラマイウォーズについての所感を簡単に述べてみたいと思います。
簡単にと前フリを入れたのは語る要素がそれほどないゲームだったのですね。いわゆる凡作といってよくブランド処女作からずっと追いかけているアサプロの中では、2作目のHimeのちHoneyに次ぐ評価の低いゲームとなってしまいました。
アサプロらしさといえば「笑い」といっても過言で無いくらい強引でも笑いにもっていく貪欲さがウリだったはずですが、今回はややその笑いの要素が薄かった。というのも最近のアサプロは会話のキャッチボールによるものでなく、キャラクターに頼ったギャグが笑いの主体となっていました。今回笑いについての軸になったのは哲と夏瑠の神宮夫妻に主人公の弟であるたかしだったのですが、彼らの出番が存外少なかったのですね。というのも今回のアサプロはどうも萌え要素を強めようとしたようで、ヒロインキャラの会話を強く押し出してきたのですね。だからその真面目キャラがギャップとしての笑いに繋がりそうだったたかしも出番がほとんどなく、神宮夫妻も個別ルートに入ると出番が限られてしまい、笑いが少なくなってしまったのです。
まあこれまでのアサプロなら攻略ヒロインに泥をを啜らせてでも貪欲に笑いを求めてきたのですが、今回は笑いへの貢献度に関しては今ひとつでした。いやギャグメーカーという点に関しては藍咲もいて、恋愛0キロメートルで言うところの乃来亜的存在になるはずだったのですが、正直荷が重かったとしか思えない。いや行っていることは乃来亜とそう変わることはないのですが、乃来亜の笑いは演じた声優の力によるものが大きかった。それと比べると今回の藍咲の声優は頑張りは見られるのですが、どうも演技がクサ過ぎて笑いに昇華しないのです。どちらかというと一見メインヒロイン格となりそうだった境子の方が笑いを取った部分が多くそう考えると藍咲についてはミスキャストだったと思うのですね。

というわけで笑いが不足していた分、自然萌えゲーの方に触れ幅が大きくなってしまったわけですが、そういった意味で一番得したのは妹のメイでした。主人公〈兄)に対してあからさまに好意を見せ付ける境子(姉)に遠慮してかなかなか本心を見せない心情が萌え心をくすぐってくれました。ただアサプロに期待しているのは萌えよりも笑いなのですね。それにデビューの頃と比べるとレベルは上がってきたとはいえ一線級の萌えゲーメーカーの原画家と比べれば分が悪いわけで、メイ級のシナリオが少なくともあと2本はないと良作とは呼べないでしょう。それに今回はキャラの性格設定や舞台設定などがルートによって違いがあったりと複数ライターにありがちな問題を抱えているわけで(そもそもアサプロのゲームはこういった点は昔から直っていない)、こういった点が萌えゲーでは大きなマイナスになってきます。ならば萌えに寄っていくのでなくもう1度得意の土俵で勝負してもらいたいと根っからのアサプロファンのぼくは思うのです。  

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2015年08月08日

主人公への嫌悪感を上回る面白さ

これだけ積みゲーが増えてくると、次にどれに手を付けていいか迷ってしまうことが多いです。
目の前に候補のパッケージを5~6本並べて逡巡するこト小1時間。ようやく崩すゲームを決めてインストール。その後メーカーのHPへ行ってパッチがあるか確認して、修正ファイルをダウンロード。ようやくプレイ開始できると思ったときには1時間以上経過していて、既に就寝時間になっているなんてことがほとんど。
何かもっとオートマチック的にゲームを選ぶ方法がないかと思っているのですが、これがなかなか難しい。批評空間の平均(または中央)値順ならば、真っ先に手を付けなければいけないのは素晴らしき日々 ~不連続存在~(ケロQ)WHITE ALBUM2 ~closing chapter~(リーフ)なのですが、この2本をプレイするには心にかなり余裕がなければならず、なかなか踏ん切りが付かない。今、中断しているゲームを優先的に・・・とも思っているのですが、途中放棄しているのはそれなりに理由があるわけで、そのほとんどがぼくの嗜好に合わなかったものばかり。ならばと最近は購入したばかりのものから優先的に選んでいるわけですが、それでも悩む時間が多少減ったくらい。
まあ最近は購入本数が激減していて毎月1本程度しか新作を買っていないので、選択の余地は減っているのですが・・・

というわけで現在は昨年後半に購入したものを専らクリアしているところ。そんな昨年後半の中でかなり評価の高かったのが月に寄りそう乙女の作法2(Navel)です。前作はルートによってかなり出来不出来の差があったものの、総合的には面白かったといえる作品でしたし、そのファンディスクといえる乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris- (Navel)もかなり水準が高かった。というわけで期待値はかなりのものだったのですが、不安点は本編とライターが替わっていたこと。今回のメインライターである東之助氏は本編にも関わっていた(らしい)のですが、承知のとおり本編は各ルートごとに差があってもし東之助氏がハズレのルートのライターだったら目も当てられない。まあファンディスクのほとんどは彼が関わっていた(らしい)のでその懸念は杞憂に終わる可能性が大なのですが、それでも多少の不安はありました。

(ここからネタバレ)

そして序盤をプレイしてその懸念が現実のものになりかけました。というのも前作と今作の主人公のキャラクターの違いがあまりに大きかったからです。
前回の主人公が自分のことよりも他人のことをまず考えるタイプのいわゆる聖人といっていいような人物だったのに対して、今回の主人公はいわば自信家で唯我独尊。その上、人を辱めることに躊躇しない(それでいて異常に惚れられる)というおおよそぼくの趣味には合わない主人公であり、またこのようなタイプが女装潜入ものの主人公を務めるのはおよそ不適格のように思われて仕方なかったのです。
ただこういった心配はプレイするに従って徐々に解消していきました。というのも会話のテンポのよさに加えて主人公がこのような不遜な態度を見せるのは人間的に未熟であるという表れであることが徐々に明らかになってくるからです。そういった意味でこのゲームのハイライトがエストシナリオであり彼女がメインヒロインであるのは当然だと思います。まあこのゲームでたびたび(ギャグとして?)語られている人をSとMの二つに分けるという思想は(ぼくの考えでは)とても受け入れられるものではありませんが、他のヒロインとのHシーンで傍若無人ぶりを見せる主人公に対し、エストが逆に制裁を加えるシーンは痛快でした。
ただエストシナリオはこのゲームの主眼であることは間違いなのですが、伏線未消化の部分があってデキはともかく完成度が高いとは決していえないのですね。
そういった意味ではパル子(春心)や朔莉シナリオの方が小粒ながらまとまっていたといえます。というかこれまでの前科からハズレばかり(といったら言い過ぎか)だった西又キャラのシナリオがそれなりにまとまっていたことに驚いたからこその上積みかもしれませんが・・・
まず朔莉は冒頭から変人キャラ全開でおおよそヒロインを務められるような性格ではなかっただけに、あの過去についてはおおよそ予想の範疇。それでも朔莉が主人公に異常な執着(人これをストーカーという)を示すのもある意味納得できるし、天才的子役という設定からも変人キャラが作られたものというのも受容できます。ただラストの演劇シーンに盛り上がりが欠けたのが惜しまれるところ。前作にはなかったフィリア学院演劇科が朔莉というヒロインの存在のためだけに作られたといっては言い過ぎかもいれませんが、どうにも作りこみに甘さを覗かせた影響が出たのではと推測されます。

ぼく的に一番可愛く感じられたヒロインがパル子(春心)。というより親友であるマルキュー(弓)の存在に惑わされてしまっているかもしれない。というのももしぼくが主人公だったといたら絶対にマルキューの方に惹かれるであろう魅力あるキャラでしたから。
パルコの病気についてはやや大げさすぎる気もします。単なる(というと患っている人に怒られるかもしれませんが)パニック障害でもストーリー的に問題なかったような気がしないでもない。それでも二人の友情は不変だしパル子を護る主人公の姿は、他のルートにはないカッコ良さを感じさせました。

ルミネルートはデキが良い悪いとは別の次元で気に入らないことが多すぎて、ストーリーに没頭することが全く出来なかった。他のルートでは存在感のない大瑛の好人物っぷりが味わえたことくらいがプラスな点。別にルミネに責任があるわけではないのですけどね。

こうしてみると前作やFDに存在していた悪役を務める人物が今回は見当たらなかったのは意外でした。最初ラフィーレがその役を務めるかと思ったのですが、全くのハズレでした。というかあの主人公とタメを張れるような悪党を出そうとすれば、超大物の悪党にせざるを得ず、とすると雰囲気を壊してしまうことになりかねないだけに妥当だったかもしれません。全体的に言うとこれだけ感情移入できない主人公でありながらゲームを楽しめたということは、会話部分を含めそれだけ他の部分が良かったという証左でしょう。そう考えればライターに手腕について評価しなければなりません。ただ面白さの大部分については前作やFDで培ったつり乙世界という土台があってこそで、全くの新作であったとすれば好感より嫌悪感の方が上回ってしまったかもしれません。  

Posted by 7月の魚 at 13:15Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年07月25日

楽しめなかった個人的な事情

最近プレイ中のゲームで一番占有率の高い声優が小倉結衣嬢です。
ぼくが彼女の声に一番最初に触れたのが、Flyable Heart(ユニゾンシフト)のメインヒロインである稲羽結衣だったのですが、著名原画家の話題作に起用されたということで今後正統派ヒロインへの出演が増えていくのではと思っていたのですが、所属していた事務所の方針なのかその後も有名無名を問わず出演をしていて最近はヒロイン以外の役への起用が増えているような気がしていました。
この前にプレイを終えたひこうき雲の向こう側ではイジメ3人組の首領を務めていましたし、現在プレイ中の紙の上の魔法使いでも悪の魔法使いを演じています。ヒロイン役だったとしても箱庭ロジックのココはとても正統派とはいえない役でしたし、少し前になるのですが夏恋ハイプレッシャー ではババロアというブサイク犬を演じていました。これを見る限り性格声優への道を突き進んでいると思えるのですが、そんな彼女が久しぶりにメインヒロインを務めたのがどうして、そんなに黒い髪が好きなの?(ファイアワークス)です。発売前はほとんど話題にならなかったゲームでしたが、発売後の批評空間での評価は意外といっては失礼なくらい高く、予約購入してホッとしたものでした。それでいながら手を付けるまで半年近くの月日が経過してしまったのは情けない限りなのですが、ようやくクリアすることが出来ました。

そんなこのゲーム。タイトル名からしていかにもマイナー色が漂っているのですが、実際プレイしてみてその予感は正しかったことが分かります。お世辞にも洗練されているとはいえない原画に、意味があるのかないのかパッと見では分からない選択肢の数々。これではバカゲーに思われても仕方ないといえます。
とここまで書いてきて以前このライターの作品で同傾向のゲームがあったことを思い出しました。それが桜花センゴク ~信長ちゃんの恋して野望!?~で、歴史を下敷きにしたところやラストのどんでん返しなど、原画等の雰囲気は別としても似たように感じるところはかなりあるように思うのです。
ただこれは個人的な感想で申し訳ないのですが、桜花センゴク以上に今回の主人公は合わなかった。確かに終盤はカッコいいところを見せるのですが、序中盤のルートで見せる言動はどうもイラついてシナリオにのめりこむことが出来ませんでした。そのためかイチャラブ展開もやや白けたように感じられてしまったのは事実。まあその中でも幼なじみのうららのデレに入ってからの展開は定番ながらも微笑ましく中盤までのシナリオの中では一番良かったように感じました(まあこれはぼくの幼なじみ補正があるのかもしれませんが)。ただこのゲームのメインヒロインは銀杏であり彼女を可愛く感じられればしめたものなのでありライターの術中に嵌ったのかもしれませんが、これがぼく的にはそうならなかった・・・
といってもこれはぼくの個人的な事情によるものが大きいでしょう。直前にひこうき雲の向こう側をプレイした上に、 紙の上の魔法使い と同時進行して小倉結衣媛の演技を堪能していて、それに引きずられてしまって銀杏媛とのイチャラブがどうも楽しめなかったのですね。このあたりはぼくの積みゲー崩し運が悪かったと嘆くしかないのですが、ただ(塗りを含め)原画がもう少し何とかなっていれば、少なくともHシーンに関しては楽しめたと思うのです。それがHシーンが豊富だった割には、そこに持っていく展開が強引で原画力も相まって全く使えなかった。これは大きな誤算でした。

確かにこのゲームの主眼である真銀杏ルートの終盤はグッとくるものがありました。その割に手放しで褒めることができなかったのは、中盤までの展開にあまり見どころがなかったこととヒロインの魅力があまり伝わってこなかったことによるものが大きかったのでしょう。同傾向の桜花センゴクではこのあたりの欠点はそれほど感じられなかっただけに残念としか言えません。それともこのゲームの主人公のようにヒロインが黒髪というだけで悶絶してしまう体質(性癖)ならば大丈夫だったのかもしれませんが・・・  

Posted by 7月の魚 at 04:45Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年07月03日

マイルドな鬱ゲー

最近エロゲーを中古で買ったという記憶がありません。
まあ発売まもなくに未開封中古を購入したことはあります(それも殆どありませんが)が、恐らくここ5年以上はまったく中古には手を出していないことになります。
これは別にぼくが新品に拘りを持っているわけではなく、単にこれだけ積みゲーを抱えている中で事前予想で購入を見送ったゲームをいくら発売後の評判が良かったからといって(そういったゲームは新品が品薄なことが多い)改めて購入する気になれないのです。というか見送ったゲームを後で購入するのは何か悔しいということもありますが。

というわけで、ぼくがこのブログで所感を述べているゲームはほとんど新品で購入したものです。発売後期間が過ぎていて一見すると「評判の良かったゲームまたは中古で安くなったゲームばかりプレイしている。」と思われるかもしれませんが、残念ながらそうではなくて単に新品購入後すぐにプレイできるような環境ではないのですね。

まあそれならわざわざ高い新品でなく中古を購入したほうが懐にも優しいのかもしれませんが、後で購入するからと考えていて結局購入しないままプレイせずに過ぎてしまったゲームは少なからずあって、ならば新品で購入しておいて退路を断ってしまったほうがいいかなと思っているわけなのです。

さて前置きが長くなりましたが、今回所感を述べるゲームはというとひこうき雲の向こう側(FLAT)です。
昨年3月の発売ということですが、この月は大図書館の羊飼い ‐Dreaming Sheep‐(オーガスト)ハローレディ(暁WORKS)がツートップ的存在で、その他にもBALDR SKY Zero 2(戯画)Clover Day's (ALcot)もありこのゲームは発売前ほとんど注目を集めることはなかったという記憶があります。それが現在それらのゲームを差し置いて批評空間のデータ数で上回っているというのは、いかにこのゲームが発売後の評判が良かったということになるのでしょう。(まあそれだけデータ数がありながら発売元のFLATが1年以上経つというののいまだ新作の発表すらできないというのは、いかにゲームとしての売り上げが芳しくなかったかというこにもなるのでしょうが・・・

それだけ意外なダークホースとなったゲームですが、発売後の評価は好意的なものが多かった中で、鬱ゲーという感想がちらほらあったのが気になりました。メーカーHPにはドタバタ恋愛アドベンチャーとなっているはずなのに、これはどうなっているのか。これまでFLATというメーカーはバトルやシリアス系のゲームを手がけていて、確かにドタバタ恋愛アドベンチャーというジャンルには違和感はあります。とするとこのメーカー発表は隠れ蓑で陰でプレイヤーを驚かせる仕掛けを仕込んでいたのでしょうか。それはともかく、発売当時から現在までぼくの精神状態は鬱ゲーをプレイするのには向いてなくて、手を付けるのにはかなり勇気があったのですね。

というわけで延び延びとなっていたわけですが、今年に入ってからボチボチとプレイを始めました。鬱ゲーの覚悟はしていたのですが、思ったよりは陰鬱さは少なかった印象でした。ただそれでもクリアするまでかなりの時間が掛かったところを見ると、かなり考えさせる内容でありサクサク進む軽いゲームでなかったというのは間違いありません。

(ここからネタバレ)

購入する前のぼくのお気に入りヒロイン候補は佐藤さんで決まりでした。というのも他のヒロインはどうも一癖ある面子が揃っていたのですね。ところがこの佐藤さんは攻略ルートがないという罠。正直この時点でこのゲームをプレイするモチベーションを失ったというのは事実です。(これを知ってしまったというのもプレイするのが遅くなったという理由の一つでもあります)
もしかしてこれが鬱の原因ではないかと勘ぐったくらいだったのですが、最初にプレイしたいろはルートをプレイして鬱ゲーと云われる理由が分かりました。いろは母親に疎まれ家族愛のない幼少を送っているし、駄妹っぷりを序盤から見せている美奈ルートもバトミントン部を舞台とするイジメが鬱さを醸し出しています。そしてメインヒロイン格の瑛莉も過去の事件から妊娠できない(しにくい)過去を持つなどしているわけですが、こうして見るとこのゲームはヒロインの過去のトラウマがテーマといういたって古風なゲームであることが分かります。過去の名作といわれるゲームの多くがこの手法で作られていたものですが、このゲームが好評であるところを見ると、時代を経てもこの手法は有効であるということなのでしょう。
そういった意味で「ドタバタ恋愛アドベンチャー」というメーカー発表はそういった作風を隠すためであったという意見が正解のような気がしてきたのですが、ただあながちこの「ドタバタ」が間違いであるとはいえないのも事実なのですね。
というのもヒロインに降りかかる不幸やトラウマといった難題は、意外にあっさりと解決してしまうのです。これが過去の名作を倣ったとすれば、プレイヤーを泣かせるためにこれでもかと不幸の押し売りをするでしょう。鬱ゲーっぽさを漂わせながら、プレイヤーを心の底から暗鬱にさせないというのがこのゲームの特徴で、そういった意味では「ドタバタ恋愛アドベンチャー」もあながちウソではなかったといえます。

ただぼく的にはやはりラストのあっさり風味に拍子抜けしたのは事実です。それを覆い隠すのが意図と思われる瑛莉ルートの後日談もぼく的にはそれほどピンとこなかったのです(専用のCGを何枚も用意した意欲は買えますが)。まあこれは攻略ヒロインの当て馬にされた感の強い佐藤さんに、他のヒロインのルート中もずっと惹かれ続けていたことが要因なのでしょうね。
ただそんな不遇な扱いを受けている佐藤さんですが、他のヒロインと同じくらいの容量が欲しいというのはやや欲目かもしれません。彼女も家庭環境はそれほど恵まれているとはいえないのですが、そんなことは微塵も感じさせない優等生な彼女にこのゲームのヒロインは似合わなかったとも考えてしまうのです。そういった意味でもあのおまけ的な救済の仕方が妥当だったといえるでしょう。ただ最後のHシーンノ展開はあまりに唐突で彼女には相応しくなかったと思うのですが・・・  

Posted by 7月の魚 at 06:18Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年06月06日

中盤の停滞が惜しまれる

先月は1回しか更新することが出来ませんでしたが、何とか息しています。
心身ともに疲弊しきっていて駄文を書く余裕がないというのが本当のところですが、エロゲーに関する情熱も少しずつ失いつつあり、書くネタがほとんどないというのも事実。実際先月は積みゲーを一本も崩せませんでしたし、先月購入した新作もかなり前から予約していたものを引き取りにいっただけのことで、もし予約していなかったとしたら恐らく購入していなかったと思います。
どうやらぼくは心に余裕がないとエロゲーを楽しむことが出来ない性質のようです。まあ読ませるタイプのゲームでなく、ゲーム性が強く作業が気にならないようなゲームなら時間を忘れて没頭できるのかもしれませんが・・・その類のゲームは中々プレイする踏ん切りがつかないのですね。

そんなわけで、先月は実のところ月に寄りそう乙女の作法大図書館の羊飼いといった旧作(FDを含めて)を読み返したりするのが主でした。再プレイして新たな発見をしようなんていう楽しみ方ではなく、お気に入りシーンを読み返すというような後ろ向きの楽しみ方ですので、ここで取り上げるような収穫もなく・・・

まあそんな中でも何とか1本クリアすることが出来たのが箱庭ロジック(Cabit)です。Naturalシリーズを源流としているSkyFish系のゲームはこれまで全くと言っていいほど購入したことはなくて、プレイするのは十年以上前となるBeside ~幸せはかたわらに~以来というから久しぶりを通り越しています。といっても途中あまりのつまらなさにギブアップしてしまいどんなゲームだったかほとんど記憶がなく、良かったのは当時最高ランクの音楽集団だったDOORSが作曲したヴォーカルソングくらいでは、果たしてプレイした数に含めていいか怪しい。

そんなこれまで縁が薄いメーカーのゲームをなぜ購入したかというとミステリーADVという公称に惹かれたからですが、あらすじにある連続少女失踪事件と名探偵ヒロインいういかにも本格推理を思わせる発端はミステリ好きにはたまらない内容。ただそうした発端を考えると、最後までプレイした感想はミステリとしては弱い。いや弱いというのはかなり語弊があるので謎解きを主眼とする狭義の意味でのミステリではなく、広義のミステリだったと云い換えた方がいいかもしれません。

というのも本来の連続少女失踪事件の真相は、多少ミステリ慣れしたプレイヤーなら中盤くらいであらかた分かってしまうのですね。また勘のいい人なら犯人も恐らく想像がつくと思います。そういった意味では本格推理の冠を被せるのはやや辛く、謎解きやトリックを期待した人には当然辛い評価をされてしまうでしょう。またプレイヤーにも分かるような謎が、終盤になっても主人公が解けず流れのまま身を任せるといった主人公のキャラクターから無能主人公というレッテルを付けられてしまったのも辛い。(まあ助手のポジションでありながら聞き込みも出来ない役立たずなので仕方ないのかもしれませんが)

ただぼくのようなトリックを主眼とした本格推理でなく、広義の意味でのミステリを好む層にとって主人公のキャラは引っかかるもののストーリー全体を考えれば悪くなかったと思います。確かに最初呈示されていた連続少女失踪事件という謎こそ軽いものの、実のところこのゲームの一番大きなトリックは中途語られる箱庭の物語が本編にどう絡むのかといった点にあったと思うのですね。一見ストーリーに絡んでこないように見えて実は・・・というのは、こうしたミステリにとっては常道でありながら、うかつにもぼくは騙されかかってしまいました。このゲームはサブヒロインのシナリオに見所が無くキャラクターも弱いため流し読みをしてしまったことにつられて、ついこの箱庭の物語も深く考えないまま読み飛ばしてしてしまったのです。

実は後で考えると、ストーリー的に矛盾というより細かなアラもないわけではない(霧架と主人公の母親の関係等)ですが、ぼく的には上手く騙されたという印象が強く、論う気にはなれないというのが正直なところです。読後感もストーリーを考えれば決して悪くなくうまく纏めたなというのが正直なところ。何よりメインヒロインである霧架が最初想像していた以上に可愛くて、このゲームを彩ってくれました。

ただこのゲームが意外なほどに評価が低いのは、このミステリの発端となる連続少女失踪事件という謎の扱い方にあると思うのですね。このゲームの主眼がトリックでない以上ある程度のサスペンス性が必要です。まあ確かに霧架や瑚子というヒロインが失踪するシーンもあることはあるのですが、これがすべてバットエンド扱いでストーリーが中断してしまうのです。これではしょど印象に残らずサスペンスとしての効果は薄いと云わざるを得ません。
確かにライターは苦労してこの事件の被害者たちの家族背景を丹念に描写してストーリーに膨らみを与えようとしているのですが、それに加えて主人公(プレイヤー)と序盤接していたキャラクター(例えばにちかのような)を一人くらいは犠牲者とした方が、よりサスペンス性及び犯人(加害者)への憎しみに結びついたと思うのですね。
鍵によってルートを縛り、読ませていくという手法は面白かったと思うのですが、ラストの真相究明はともかく中盤でもプレイヤーを引っ張るような工夫があればもっと評価を得られていたと思うのです。本格推理なら第2第3の事件が発生するというのが常道ですが、このゲームは美少女ゲームなわけですから、サブヒロインの魅力で引っ張るというのも一つの手だったでしょう。確かにメインヒロインの霧架は魅力的だったのですが、それ以外のヒロインの魅力が薄かったというのも誤算だったかもしれません。

ただ決して酷評される類のゲームではないということは断言できます。名作には至らなくても佳作というのが妥当なところで、もし出来ることなら序中盤をもう少し練り直してリメイクしてもらいたいなと思ったりするわけですが。  

Posted by 7月の魚 at 18:27Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム

2015年04月30日

残念だったのはヒロインでなく

今回はぼくが初めてプレイしたチュアブルソフトのゲームである残念な俺達の青春事情。に関する雑文です。といっても積みゲーの山の中にはチュアブルソフトの過去作が2本あり、決して初めて買ったゲームというわけではありませんが・・・

さて以前のチュアブルソフトといえば1年に1作品リリースするかどうかというどちらかといえば寡作の印象があったブランドで、看板絵師(だった)のぎん太氏の最近ではあまり見られない(こうした他には類を見ない絵師というとやや絵柄は異なるがBeFのメイン原画家だった厘京太朗にイメージが重なる)特徴のあるキャラクターが魅力というイメージだったのですが、最近はぎん太氏がブランドを離れたこともあってそのイメージも薄れつつあります。
そして現在の看板絵師といえばまんごープリン氏。確かぎん太氏も女性だったという記憶があるので、性別が同じ(らしい)という共通点はありますが、絵柄は流行の萌え絵寄りになり「これぞチュアブルソフト。」という特徴さに欠けてしまったような気がします。(どちらが良いかというのは一概には言えませんが)
ただ絵柄という特徴が失われた分、何か別の明確な方向性を発して置かないと幾多もあるメーカーの中に埋もれてしまいかねない。ぎん太氏が離れて以降、関谷まさみ氏を原画家に起用したスイートロビンガールはともかく、他のゲームはどうも印象の薄い作品ばかりがリリースされ、その危惧が現実のものになりかけつつあったチュアブルソフトにとって昨年9月にリリースされたあの晴れわたる空より高くはそれを覆すスマッシュヒットといっていい作品でした。そんな「あの晴れわたる空より高く」は看板絵師であるまんごープリン氏がメインではなかったことから、氏がメイン絵師を担当する残念な俺達の青春事情。もその勢いに乗ってくるかと思わせるところ。その上実績充分の羽鳥ぴよこ氏とタッグを組むわけですから萌えとシナリオの両立も十分。設定もいかにもぼく好みというわけでそれんなりに期待してのの購入でした。

そんなこの作品でしたが、現在の批評空間のデータ数を見ると「あの晴れわたる空より高く」の4分の1以下でかなり寂しくなっています(それでも前々作の我が家のヒメガミさまっ!の埋もれっぷりよりははるかにマシと言えますが)。中央値も70点台前半をうろうろしていて、タイトルどおり残念な結果となってしまっているようです。その原因はエロゲーファンならおおよそ察しられるわけですが・・・


(ここからネタバレ)


このゲームのウリと思われたのが、まずヒロイン全員が残念系女子ということ。狙ってでなく偶然(結果的)にヒロインの大多数が残念なことになっていたというゲームはこれまで見かけたことはあったのですが、最初からヒロイン全員が残念系と公言しているというのは、ぼくの記憶ではほとんど覚えがない。つまり残念系という萌えゲーのヒロインにとってはマイナススタートとなる部分を、どうプラスに昇華していくかがライターの手腕となるわけです。

そしてもう一つが主人公とヒロインたちが所属する非公式生徒会と「もっさん」ことサブヒロインの一人である橋本会長が率いる生徒会との関係。非公式と自称する限りは当然生徒会とは確執や対決する場面があるはず。でなければそもそも「非公式」と名乗る意義が見出せず、存在意義すら問われてしまう事態になりかねない。この生徒会いや「もっさん」との関係もこのゲームが良作になる上でのカギとなるとぼくは見ていました。
こうした生徒会との対決となるゲームの場合、主人公側が善で生徒会側を悪役と設定してしまう方がプレイヤーにとって分かりやすいしライターにとっても楽なのですね。ただこれではあまりに芸がないし「もっさん」のキャラ的に相応しくない。もちろん生徒会長の預かり知らぬところで部下〈副会長等)が暗躍しているというケースも考えられるのですが、ならば主人公側を悪というよりも生徒会のアンチテーゼ的存在として活かした方がより面白くなる可能性が高いです。法(校則)に捉われた頭の固い判断しか出来ない生徒会のアンチテーゼとして、主人公やヒロインが裏で活躍する・・・こんなストーリーが展開されるとぼくは思っていました。

ただこれがぼくの考えたとおりには進行しなかったのですね。というより非公式生徒会というのはいわゆる便利屋のようなもので、生徒会とイデオロギー的対決するシーンは全くといっていいくらい見られないのです。一般生徒の学園生活を楽しませるという目的は一致していても、その手法が違うという意味で主人公たちと「もっさん」が対決するというシーンが多く展開されればプレイヤーにとって考えさせるシナリオになったのですが、単なるドタバタ(このドタバタシーンがあまり面白くない)した日常が続くだけではいかにも生徒会のアンチテーゼ的名称である「非公式生徒会」なんて大仰なものを付ける意味は全くといっていいくらい無かったとぼくは思うのです。

では当初の残念系ヒロインとの恋愛という点はどうだったかというと、これもあまり機能していない・・・というよりヒロインたちがちっとも残念でないのです。燐音のコミュ障は序盤でほぼ解決(直る)してしまうし、ちまちの守銭奴もほとんどそれを生かされたシーンがない(そもそも秘密基地をほとんどロハで提供している時点で守銭奴ではないですし)。咲耶のアホというのもそれは学業に関することだけで社会常識が欠けているわけではないですし、棗先輩の自堕落で生活性ゼロというのは確かに残念なのかもしれませんが、これは他の美少女ゲームでよく見られるタイプのヒロインであり、残念系と胸を張るほどの目新しさはない。この陣容でヒロイン全員が残念系と謳ってしまうのでは看板倒れになってしまったのも当然ではないかと思うのです。
また他の非公式生徒会のメンバーである慶二や道太郎も基本的に「いい奴」で残念系という言葉にはそぐわない。唯一「非公式生徒会」のメンバーの中で文句なしに残念系といえるのが主人公で、寒いギャグを言ったり個別ルートになるとヘタレになったりと一人残念を貫いています。とするとこのゲームの本当のタイトルは俺達でなく「残念な俺の青春事情」ではなかったかとツッコミを入れたくなるのですね。

そんな残念さが欠けていたヒロイン連の中で、ぼくが唯一残念だなと思ったのがサブヒロインである「もっさん」ではないかと思うのです。いい人過ぎて主人公どころか学園側にも利用されるなんて本当に残念だし、家庭も貧乏でバイトに明け暮れるのも残念。そんな陰を微塵も見せないのもまるで女神のようで残念だし、そのうえ個別ルートもおざなりで「ちょろカワ系」と謳われている咲耶以上に主人公にちょろく堕とされているのも残念。こう考えるのもぼくが考える残念のベクトルが違っているのか、それとも主人公以上にぼくが「残念」なのかよく分からなくなったといったところで、この雑文を締めたいと思います。  

Posted by 7月の魚 at 16:57Comments(0)TrackBack(0)美少女ゲーム